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【徹底解説】財務分析 収益性・安全性・生産性・成長性の分析手法

 

財務分析とは、財務諸表を様々な観点から分析して、企業の経営状態の良否を判断することです。企業の経営者はもちろん、株式投資をする上でも重要な分析になります。この記事では、財務諸表を使った財務分析の方法を紹介していきます。

 

 

分析1.収益性分析

 まずはじめに、成長性分析について解説していきます。

売上高利益率

損益計算書からは各々の利益を売上高で除した利益率を求めることができます。ただし税引き前当期利益率は一般的に用いられないようです。

■売上高総利益率
売上高総利益率は、販売している商品の利益率を表わします。マーケットの状況を反映しているので、企業の競争力がわかります。売上高総利益率が同業他社と比べて低い場合、コスト競争力に問題があると考えられます。売上総利益率が落ちている場合、原価の高騰か、値引き販売が原因と推測されます。


■売上高営業利益率
売上高営業利益率は、営業活動による利益率を表します。この比率を同業の会社同士で比較することで、販売・管理活動の効率性を測ることができます。

売上高営業利益率を費用の面から詳しく分析することで、その企業が広告宣伝に力を使っているのか、研究開発に力を使っているのかなど、バリューチェーンのどこを重視しているのかというのを判断することができます。

 

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■売上高経常利益率
売上高経常利益率は、金融収支といった財務体質まで含めた総合的な収益性を表します。業績評価の指標として最も重要視されています。売上高経常利益率が売上高営業利益率に比べ、大きな差があるようだと、企業の財務体質を注意してみる必要があります。

金融収支が大きくプラスしているようだと財務面に力を入れていると判断できますが、現金や有価証券が多いことで株主からはその資産の有効活用を求められることになります。一方で、金融収支が大きくマイナスしているようだと、財務面での弱さがあると判断できますが、株主からは財務レバレッジを上げて積極的な戦略をとっているとして歓迎される場合もあります。


■売上高純利益率
売上高純利益率は、売上に対して企業の最終利益がどの程度残るかを表します。通常は売上高経常利益率に(1-実効税率)を掛け合わせれば売上高純利益率になりますが、あまりに売上高純利益率が乖離しているようだと、特別損益の内容をよく見る必要があります。(日本企業の実効税率は40%程度です)

利益率は、高ければ高いほどよいのですが、業種によって水準が大きく異なるので、分析の際は同業種間で比較するのがよいでしょう。

 

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営業CFマージン

売上高営業利益率のキャッシュフロー版です。

 営業CFマージン=営業CF/売上高

 

ROA 総資本利益率

総資本利益率とは会社が運営している資本を利用していかに効率よく利益を上げたかを測る指標です。

 総資本利益率=当期純利益/総資産

 

ROE 自己資本利益率

自己資本利益率とは株主が拠出した自己資本を利用していかに効率よく利益を上げたかを測る指標です。日本では、この値は15%程度あると高い部類に入ります。

 自己資本利益率=当期純利益/自己資本
 (自己資本=純資産-新株予約権-少数株主持分)

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資本回転率

資本回転率とは売上高に対して資本がどれだけ回転しているかを表すもので、資本の利用効率を表します。資本回転率が悪いとキャッシュの流れが滞る原因になります。

・固定資産回転月数 (=固定資産×12/売上高)
・売上債権回転月数 (=売上債権×12/売上高)
・在庫回転月数 (=棚卸資産×12/売上原価)
・買入債務回転月数 (=買入債務×12/売上原価)


いずれも、期間が短い方が効率的に資産運用をしているということになります。

 

参考ページ

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分析2.安全性分析

次に、財務の安全性について説明します。安全性を見ることで企業の財務が健全で倒産することがないかを知ることができます。安全性は、企業体力と言い換えることできます。

 

流動比率

流動比率とは、流動資産によって流動負債をどの程度返済可能かを見るための指標です。流動比率は貸借対照表の項目を使って、次のように計算されます。

 

流動比率 = 流動資産/流動負債

 

流動比率は200%以上が望ましいとされていますが、現実的に200%以上の企業は少なく、一般的には120%~140%であれば健全であるとされています。

流動資産を見る場合には、現金化の目処が立っていない不良債権や不良在庫に注意をしておく必要があります。流動比率よりも厳しい指標として当座比率があります。

 

流動比率の改善

流動比率を改善するには、次のような方法があります。

 

①固定資産を減らし流動資産を増やす
(例)固定資産を売却によって減らし、換金により現金を増やす。
この方法は、バランスシートを肥大化させることなく流動比率を増やすことができるので、比較的デメリットが少ないといえます。

 

②固定負債を増やし流動資産を増やす
(例)長期借入金や社債を発行し、現金を増やす。
この方法は、短期的な改善方法といえます。なぜなら、借入金や社債は期日までに現金で返済する必要があるためです。また、収益性の改善がないとROAの低下を招きます。

 

③資本を増やし流動資産を増やす
(例)増資によって資本を増やし、現金を増やす。
この方法は、資本の肥大化を招きます。収益性の改善がないとROEが低下し、株主価値の減少につながります。

 

流動比率が低い場合

流動比率の望ましい水準が120%以上とはいえ、流動比率が100%を切るような企業も実際にはたくさんあります。ただ、流動比率が低い場合でも、金融機関の支援がしっかりしているような場合は、大きな問題ないと判断できます。

また、最近では余剰キャッシュの持ちすぎはM&Aの対象になることから、意図的に流動比率を低めにする場合もあるようです。

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当座比率

当座比率とは、当座資産(流動資産から棚卸資産を引いたもの)によって流動負債をどの程度返済可能かを見るための指標です。当座比率は貸借対照表の項目を使って、次のように計算されます。

 

当座比率 = 当座資産/流動負債

 

当座比率は80~100%以上が望ましいとされています。

 

棚卸資産は商品価値の低下により、そのまま不良在庫になる場合があります。そのため、流動負債の返済は現金化の容易な当座資産で行うべきという考え方に基いているのが当座比率になります。当座比率は、同じような指標である流動比率に比べると厳しい指標であるといえます。

 

最近では、余剰キャッシュが多いとM&Aの対象になることから、意図的にキャッシュを減らし当座比率を低くしている企業もあるようです。

 

自己資本比率

自己資本比率とは総資本に対する自己資本の割合を示す指標です。

 自己資本比率=自己資本/総資産
 (自己資本 = 純資産-新株予約権-少数株主持分)


自己資本比率は30%を超えているのが望ましいとさています。ただし自己資本比率が高いからといって投資に値する企業ということではありません。その資本をいかに有効に活用するかが大事なのです。日本では比較的自己資本比率が低い企業が多く、一桁の企業もあります。

 

純資産比率

2006年5月から新会社法施行により、自己資本と純資産は違うものを示すようになり、項目にも変更がありました。

 

  純資産 = 株主資本(評価・換算差額等含む)
        +少数株主持分+新株予約権

 

純資産には、今まで株主資本とか自己資本と呼ばれていた「株主資本(評価・換算差額等含む」に少数株主持分と新株予約権が新たに付け加えられました。

 

したがって、上記の自己資本比率の他に、純資産比率という形でも安全性を見る場合があります。(ただし、純資産は上述のようにこれまでの自己資本とは異なるため、純資産比率と従来の自己資本比率とは連続性のない指標になります。)

 

 純資産比率 = 純資産/総資産

 

固定比率

固定比率とは、固定資産を自己資本によってどの程度賄うことができるかを見るための指標です。固定比率は貸借対照表の項目を使って、次のように計算されます。

 

  固定比率 = 固定資産/純資産

 

固定比率は、同じようなの指標である固定長期適合率に比べると少し厳しい見方といえます。

 

一般的に、固定比率は100%以下であれば、望ましい水準とされていますが、製造業などは100%を超えるところも多く、160%以下ならまずまずの数字といわれています。

 

固定長期適合率

固定長期適合率とは、固定資産をどのような資金で賄っているか目安をつけるための指標です。固定長期適合率は、貸借対照表の項目を使って、次のように計算されます。

 

  固定長期適合率 = 固定資産/(純資産+固定負債)

固定長期適合率では、固定資産が自己資本と比較的返済期間の長い固定負債でどの程度賄えているかがわかります。同じようなの指標である、固定比率に比べると少し甘い見方といえます。

 

一般的に、固定長期適合率は100%以下であれば、望ましい水準とされています。

 

固定長期適合率は、流動比率と表裏一体の指標です。流動比率の改善は、固定長期適合率の改善につながります。

 

債務償還年数

 債務償還年数=有利子負債/営業利益
 または
 債務償還年数=有利子負債/営業CF

 
現在の有利子負債を営業利益または営業CFによって何年間で返すことができるかを測る指標です。有利子負債はキャッシュによって返済されるものなので、企業の財務分析では営業CFベースの債務償還年数を用いていきます。債務償還年数が1年以内であれば、かなり優良といえます。

 

インタレスト・カバレッジ・レシオ (ICR)

 ICR=(営業利益+金融収支)/支払利息
 または
 ICR=(営業CF+金融収支)/支払利息

 
有利子負債から発生する利息に対して、何倍の営業利益または営業CFを得ているかを測る指標です。債務償還年数同様、営業CFベースで企業分析を行います。ICRが1倍を下回ると事業収益から利息を支払う能力がないことを示します。日本の上場企業は平均すると5倍程度のようです。

 

損益分岐点比率

損益分岐点比率とは、損益分岐点分析によって求めた損益分岐点売上高と実際の売上高の比率のことです。この数字は小さければ小さいほど優良といえます。

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手元流動性

上記のほかに、流動的な資金の水準を表す手元流動性(=現金・預金+短期保有の有価証券)なども、安全性指標として使われる場合があります。

 

手元流動性とは、現・預金と、償還期限あるいは売却期限が1年以内を予定しているの有価証券の合計額のことをいいます。

 

 手元流動性 = 現金・預金 + 1年以内に売却予定の有価証券

 

つまり、手元流動性は換金性が極めて高い資産のことで、これが多いほど企業の支払い能力が高いことを示します。手元流動性は企業の保有しれいるキャッシュとほぼイコールと考えてよいと思います。

 

手元流動性が多ければ、借入金の返済に困らないなどのメリットがありますが、逆にデメリットもあります。

 

例えば、手元流動性は利子や配当金などで利益をもたらしますが、これが事業の利益率より低い場合、相対的に見ると手元流動性の資産は有効活用できていないということになります。また、最近では手元流動性が多いと、企業買収のターゲットになるというデメリットもあります。

 

また、手元流動性を売上高で割った値を手元流動性比率といいます。

 

 手元流動性比率=手元流動性/(売上高/12) 【ヶ月】

 

日本の上場企業の手元流動性比率は、およそ1~1.5ヶ月です。

 

債務超過とは

債務超過とは、貸借対照表上で、資産の合計より負債の合計が上回っていて、資本がマイナスの状態のことです。債務超過になると、資産を全て売却しても負債の全額を返済できないことになります。この状態になると、会社整理が必要になります。

 

ちなみ、債務超過に陥って企業が破綻すると、最も損失を被るのが株主です。なぜなら法令によって、株主への資金の返済は一番最後と決められているからです。言い換えると、株主はそれだけ企業破綻のリスクを大きく背負っていることになります。

 

 

分析3.生産性分析

次に、企業の生産性について説明します。生産性を見ることで企業の投入した経営資源に対するアウトプットを知ることができます。

 

付加価値

付加価値とは、企業のヒト・モノ・カネを使って新たに生み出した価値を意味します。付加価値の計算方法には、中小企業庁方式と日銀方式の2種類があります。

 

※中小企業庁方式
中小企業庁方式では、付加価値は次のように求められます。

 

 付加価値 = 売上高 - 外部購入価値

 

外部購入価値には、材料費、購入部品費、運送費、外注加工費などがあります。

 

 

付加価値の図式例

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※日銀方式
日銀方式では、付加価値は次のように求められます。

 

 付加価値 = 経常利益 + 人件費 + 貸借料 + 減価償却費 
           + 金融費用 + 租税公課

 

中小企業庁方式では、付加価値は売上高から外部購入分の価値を差し引いたものという考え方に対し、日銀方式では、付加価値は製造課程で積み上げられていくという考え方になっています。


売上高に占める付加価値の割合を付加価値率といいます。計算式は次ぎのとおりです。

 

 付加価値率 = 付加価値/売上高

 

付加価値率が高いと、会社が商品に対して付け加えている付加価値が大きいというとこを示し、粗利益率等の基本的な収益率も高いと考えられます。

 

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労働生産性

労働生産性とは、従業員一人当たりがどれだけ付加価値を生み出しているかを示す指標です。

 

 労働生産性 = 付加価値/平均従業員数

 

労働生産性を上げるには次のような方法があります。

①付加価値の増加
中小企業庁方式では、付加価値は売上高から外部購入価値を引いたものなので、付加価値を増加させるためには、部品の内製化をして外部購入費を減らすなどの方法があります。

②従業員数の削減
早期退職の募集などで従業員数を減らすなどの方法があります。また、アウトソーシングを活用して従業員数を減らすという方法もあります。アウトソーシングは、活用の仕方によっては、外部購入価値の減少にもつながります。

ただし、メーカーなどの場合、産業機械の導入して従業員を削減することにより労働生産性を高めた場合、資本生産性を落とすことになります。

 

労働生産性をブレークダウン

労働生産性は、様々な指標により細分化することができます。

 

(売上高による細分化)

 労働生産性 = (売上高/平均従業員数) × (付加価値額/売上高)
         = 従業員一人当たりの売上高 × 付加価値率

 

(総資本による細分化)

 労働生産性 = (総資本/平均従業員数) × (売上高/総資本) 
            × (付加価値額/売上高)
         = 資本集約度 × 総資本回転率 × 付加価値率

 

(人件費による細分化)

 労働生産性 = (人件費/平均従業員数) / (人件費/付加価値額)
         = 従業員一人当たりの人件費 / 労働分配率

 

(設備投資による細分化)

 労働生産性 = (有形固定資産/平均従業員数) × (付加価値額/有形固定資産)
         = 労働装備率 × 設備生産性

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労働装備率

労働装備率とは、企業の従業員一人当たりの有形固定資産を示します。

 

 労働装備率 = 有形固定資産 / 平均従業員数

 

従業員一人当たりに対する設備が多いほど、労働装備率は大きくなります。製造業は、労働装備率が大きい傾向にあります。

労働装備率が大きいほど、企業の労働生産性は向上します。

 

労働分配率

労働分配率とは、付加価値に占める人件費総額の割合のことをいいます。

 

 労働分配率 = 人件費 / 付加価値

 

労働分配率と賃金水準の関係は、業種や企業によって大きく異なります。また、同じ企業でも、設備投資額や、取扱商品、製品などに大きな変化があれば、賃金水準が変わらなくても、労働分配率が大きく変わることがあります。

日本の企業の労働分配率は70%台前半で推移しています。


労働分配率は、国民所得に占める賃金の割合のこというときもあります。

 

 労働分配率 = 賃金 / 国民所得

 

資本生産性

資本生産性とは、有形固定資産あたりに生み出す付加価値の割合を示す指標です。

 

 資本生産性 = 付加価値 / 有形固定資産

 

資本生産性が高い会社というのは、少ない設備で大きな付加価値を生み出しているということになります。

 

一般的に、資本生産性は労働生産性とトレードオフの関係になります。例えば、産業機械の導入により自動化を図ったメーカーの場合、従業員を減らしたことで労働生産性が上がりますが、設備を増やした分だけ資本生産性が下がることになります。

 

分析4.成長性分析

どれだけ、収益力が高く、財務体力があっても成長性のない会社は、魅力に欠けるものです。ここでは、企業の成長性について説明します。

成長性を調べるには、財務諸表から得られるデータを時系列(3~5年くらい)に並べてみる必要があります。以下は成長性を調べる上で重要な指標です。

 

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売上高成長率

 売上高成長率 = (当期売上高 - 前期売上高)
             / 前期売上高 × 100


売上高の伸びがわかります。売上高が伸びているということは、前年に比べて、「市場を拡大している」か、「シェアをアップさせている」かあるいは、「販売単価の高い商品を売っている」ことになります。

 

経常利益成長率

 経常利益成長率 = (当期経常利益 - 前期経常利益) 
               / 前期経常利益 × 100


経常利益増加の度合いがわかります。経常利益成長率>売上高成長率の関係になる企業は良好な成長をしていると見ることができます。

 

その他の成長性指標


 総資産増加率 = (当期総資産 - 前期総資産)
             / 前期総資産 × 100


 人件費増加率 = (当期人件費 - 前期人件費)
             / 前期人件費 × 100


このふたつは、将来の成長に必要な投資をすると増加する値です。しかし、会社のキャパシティ以上に増加するのは良くありません。一般的に、この二つの指標は、売上高成長率を下回っていればバランスのとれた成長をしていると見ることができます。

このほかに、次のような成長性を見る指標があります。

 自己資本増加率 = (当期自己資本 - 前期自己資本)
              / 前期自己資本 × 100

 (自己資本 = 純資産-新株予約権-少数株主持分)

 株式配当増加率 = (当期株式配当 - 前期株式配当)
              / 前期株式配当 × 100

 

成長性を表す指標としてよく使われるCAGR

CAGRとは、Compound Annual Growth Rateの略で、複利計算によって求めた成長率のことです。CAGRは、年平均成長率と訳されます。(CAGRは、シーエージーアールと読みます)

CAGRは、次のように求められます。

 CAGR = (X+Y年度の数字/X年度の数字)^{1/(X+Y-X)} - 1

 

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例えば、ある企業が、次のような売上推移になっているとします。

  2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
売上高 300 305 310 380 500
対前年
売上高成長率
- 1.7% 1.6% 22.6% 31.6%

 

ここで、 CAGRを計算すると次のようになります。

 

 CAGR = (500 / 300)^{1/(2010-2006)} - 1 = 13.6%

 

これは、2006年から13.6%の成長を続けると、2010年には売上高が500になることを意味します。

 

2006年に対する2010年の売上高成長率は、単純平均だと14.4%になります。しかし、各年度の成長率のバラツキが大きい場合、単純平均が真の平均成長率を表しているかは疑わしい状態になります。

 

実際、各年度の成長のバラツキが小さければ、単純平均とCAGRの差は近くなりますが、バラツキが大きくなるほど差は大きくなります。

 

 

継続可能成長率(サステイナブル・グロースレート)

継続可能成長率とは、企業が自己資本の割合を変えないとしたとき、永続的な成長がどの程度できるかを表すものです。売上高の増分をΔS、売上高をSとすると、売上高の継続可能成長率は次の式で表されます。

ΔS/S=売上高純利益率×内部留保率×総資産回転率/自己資本比率

ただし、この式にはいくつか前提があります。
・企業は成長のために新株を発行しない
・企業は配当性向と自己資本比率を一定に保つ
 (内部留保して自己資本が増えると、同じ割合で負債も増える)
・総資産回転率を一定とする
 (売上の増分に比例して総資産も増える)

この式の右辺を分解すると次のようになります

右辺=
(純利益/売上高)×(1-配当性向)×(売上高/総資産)/自己資本比率

さらに簡単にすると

右辺=(1-配当性向)×純利益/純資産
   =(1-配当性向)×ROA /自己資本比率

したがって、継続可能成長率は

継続可能成長率=(1-配当性向)×ROA/自己資本比率
          =(1-配当性向)×ROE

すなわち、この理論で行くと企業が継続可能な成長率を超えて成長していこうと思うならば、配当性向を減らすか、総資産利益率(ROA)を上げるか、自己資本比率を下げる(借入金を増やす)かのいずれかになるということです。(しかし、配当性向を下げれば株主は離れていきますし、借入金を増やせば倒産リスクが大きくなります。)

 

実際に売上高成長とROAの関係は理想的なのか?

実際に優良と呼ばれる企業で検証してみます。図は武田薬品工業の1995年~2004年までの売上高成長率と継続可能成長率を表したものです。

継続可能成長率 サステイナブルグロースレート

武田薬品の場合、継続可能成長率を超えたのは1994年から2004年の10年間で2年だけでした。これは、武田薬品が着実に成長を遂げていることを意味します。例に出した武田薬品のような成熟してきた企業と新興事業の企業では傾向は全く異なります。(継続可能成長率に近い売上高成長をしている企業としてセブンイレブンがあります。)

 

 

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