Ns spirit 投資学・経営学研究室

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財務分析 成長性の分析方法を解説

財務分析(成長性)
どれだけ、収益力が高く、財務体力があっても成長性のない会社は、魅力に欠けるものです。ここでは、企業の成長性について説明します。

成長性を調べるには、財務諸表から得られるデータを時系列(3~5年くらい)に並べてみる必要があります。以下は成長性を調べる上で重要な指標です。

 

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売上高成長率
 売上高成長率 = (当期売上高 - 前期売上高)
             / 前期売上高 × 100


売上高の伸びがわかります。売上高が伸びているということは、前年に比べて、「市場を拡大している」か、「シェアをアップさせている」かあるいは、「販売単価の高い商品を売っている」ことになります。

 

経常利益成長率
 経常利益成長率 = (当期経常利益 - 前期経常利益) 
               / 前期経常利益 × 100


経常利益増加の度合いがわかります。経常利益成長率>売上高成長率の関係になる企業は良好な成長をしていると見ることができます。

 

その他


 総資産増加率 = (当期総資産 - 前期総資産)
             / 前期総資産 × 100


 人件費増加率 = (当期人件費 - 前期人件費)
             / 前期人件費 × 100


このふたつは、将来の成長に必要な投資をすると増加する値です。しかし、会社のキャパシティ以上に増加するのは良くありません。一般的に、この二つの指標は、売上高成長率を下回っていればバランスのとれた成長をしていると見ることができます。

このほかに、次のような成長性を見る指標があります。

 自己資本増加率 = (当期自己資本 - 前期自己資本)
              / 前期自己資本 × 100

 (自己資本 = 純資産-新株予約権-少数株主持分)

 株式配当増加率 = (当期株式配当 - 前期株式配当)
              / 前期株式配当 × 100

 

成長性を表す指標としてよく使われるCAGR
CAGRとは、Compound Annual Growth Rateの略で、複利計算によって求めた成長率のことです。CAGRは、年平均成長率と訳されます。(CAGRは、シーエージーアールと読みます)

CAGRは、次のように求められます。

 CAGR = (X+Y年度の数字/X年度の数字)^{1/(X+Y-X)} - 1

 

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例えば、ある企業が、次のような売上推移になっているとします。

  2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
売上高 300 305 310 380 500
対前年
売上高成長率
- 1.7% 1.6% 22.6% 31.6%

 

ここで、 CAGRを計算すると次のようになります。

 

 CAGR = (500 / 300)^{1/(2010-2006)} - 1 = 13.6%

 

これは、2006年から13.6%の成長を続けると、2010年には売上高が500になることを意味します。

 

2006年に対する2010年の売上高成長率は、単純平均だと14.4%になります。しかし、各年度の成長率のバラツキが大きい場合、単純平均が真の平均成長率を表しているかは疑わしい状態になります。

 

実際、各年度の成長のバラツキが小さければ、単純平均とCAGRの差は近くなりますが、バラツキが大きくなるほど差は大きくなります。

 

 

継続可能成長率(サステイナブル・グロースレート)
継続可能成長率とは、企業が自己資本の割合を変えないとしたとき、永続的な成長がどの程度できるかを表すものです。売上高の増分をΔS、売上高をSとすると、売上高の継続可能成長率は次の式で表されます。

ΔS/S=売上高純利益率×内部留保率×総資産回転率/自己資本比率

ただし、この式にはいくつか前提があります。
・企業は成長のために新株を発行しない
・企業は配当性向と自己資本比率を一定に保つ
 (内部留保して自己資本が増えると、同じ割合で負債も増える)
・総資産回転率を一定とする
 (売上の増分に比例して総資産も増える)

この式の右辺を分解すると次のようになります

右辺=
(純利益/売上高)×(1-配当性向)×(売上高/総資産)/自己資本比率

さらに簡単にすると

右辺=(1-配当性向)×純利益/純資産
   =(1-配当性向)×ROA /自己資本比率

したがって、継続可能成長率は

継続可能成長率=(1-配当性向)×ROA/自己資本比率
          =(1-配当性向)×ROE

すなわち、この理論で行くと企業が継続可能な成長率を超えて成長していこうと思うならば、配当性向を減らすか、総資産利益率(ROA)を上げるか、自己資本比率を下げる(借入金を増やす)かのいずれかになるということです。(しかし、配当性向を下げれば株主は離れていきますし、借入金を増やせば倒産リスクが大きくなります。)


実際に売上高成長とROAの関係は理想的なのか?
実際に優良と呼ばれる企業で検証してみます。図は武田薬品工業の1995年~2004年までの売上高成長率と継続可能成長率を表したものです。

継続可能成長率 サステイナブルグロースレート

武田薬品の場合、継続可能成長率を超えたのは1994年から2004年の10年間で2年だけでした。これは、武田薬品が着実に成長を遂げていることを意味します。例に出した武田薬品のような成熟してきた企業と新興事業の企業では傾向は全く異なります。(継続可能成長率に近い売上高成長をしている企業としてセブンイレブンがあります。)