Ns spirit 投資学・経営学研究室

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【徹底解説】損益分岐点分析(CVP)とは CVPを使った企業分析

損益分岐点分析とは CVP分析とは
損益分岐点分析(CVP分析)とは、文字どおり損益が分岐する点を知るためのものです。損益が分岐する点とは、利益が出るか損失が出るかの分岐点、すなわち利益=0になるときの売上高のことです。

損益分岐点分析は企業全体や事業部別、商品別の売上・費用の目標設定を行うのに利用できます。損益分岐点を把握することで次のことがわかります。

①一定のコスト構造の中で、売上がどのように変わると利益が出るのか。
②コスト構造が変わったときに、売上と費用がどのようなレベルにあれば利益が出るのか。

損益分岐点分析は、新規事業の立ち上げや、新規商品投入の際には必要不可欠な分析になります。また、損益分岐点分析によって、企業全体のコスト構造を大まかなに把握することができます。それによって、その企業がもつリスクを明らかにすることができます。

損益分岐点の計算方法
売上高と利益にはつぎのような関係があります。

 売上高 - 変動費 - 固定費 = 利益 ・・・①

また売上高から変動費を引いたものを限界利益と言います。

 限界利益 = 売上高 - 変動費 ・・・②

この限界利益を売上高で割ったものを限界利益率といいます。

 限界利益率 = 限界利益/売上高
         = (売上高-変動費)/売上高
         = 1-変動費/売上高
         =1-変動費率  ・・・③


さて、①②式から利益は次のようになります。

 利益 = 限界利益 - 固定費

損益分岐点は利益=0のときの売上高なので、次の式が成り立つときに損益分岐点となります。

 限界利益 = 固定費

③式から損益分岐点では次の関係が成り立ちます。

 限界利益 = 売上高 × 限界利益率 = 固定費

したがって、損益分岐点での売上高(損益分岐点売上高)は次のようになります。

 損益分岐点売上高 = 固定費/限界利益率 = 固定費/(1-変動費率)

参考: 限界利益>> 、 変動費>> 、 固定費>>

損益分岐点分析の
ある会社のコスト構造が次のようになっている場合の損益分岐点分析を行います。

売上高 100百万円
変動費 75百万円
限界利益 25百万円
固定費 20百万円
経常利益 5百万円


このとき、この会社の損益分岐点売上高と安全率は次のようになります。

 損益分岐点売上高=固定費/限界利益率=固定費×売上高/限界利益
             =80百万円


 安全率=損益分岐点売上高/現在の売上高
     =80%


安全率80%は上記のように優良企業の水準です。したがって、この会社のコスト構造は優良であると言えます。

この会社のコスト構造は次のようにグラフ化すると、さらに明確にすることができます。

損益分岐点分析

計算例では、変動費と固定費が予めわかっていることを前提として計算しました。しかし、実際は企業の外部者が例のように明快に分けることは困難です。このような場合は、過去の売上と費用の関係から近似的に変動費と固定費に分解する方法を使います。
(参考 : 原価分解>>

損益分岐点を下げる方法
損益分岐点を下げるには計算過程からも明らかなように、固定費を下げる、変動費率(変動費/売上高)を下げることが有効です。また、売上単価を上げることも損益分岐点を下げるのに有効です。

■固定費を下げる
過剰設備の処分や労働効率の向上などが挙げられます。

■変動費率を下げる
原材料費の削減や流通経路の見直しなどが挙げられます。

■売上単価を上げる
売上単価が上がると変動費率が下がります。ただし、価格競争力が低下するリスクがあります。そのため、商品の付加価値アップやサービスの向上が求められます。

 

損益分岐点分析を活用する
損益分岐点分析をすると、費用構造の変化から企業活動の変化を把握したり、企業の安全性を把握したりすることもできます。

 

損益分岐点分析から費用構造の変化がわかる
損益分岐点分析では、その会社の費用構造がどのように変化したのかを見ることも大変重要です。費用構造の変化がわかると、その会社が今後何をしようとしているのかが明らかになる場合があるからです。また、費用構造の変化は、このページの最後に説明する会社の安全余裕度にも違いを生じてきます。

ここでは、回帰分析を用いた損益分岐点分析(固変分解)を用いた費用構造の変化の見方を紹介します。

 

www.nsspirt-cashf2.com



例えば、ある会社の月ごとの売上と費用の関係が次のようになっているとします。

  売上(万円) 費用(万円)
7月 180 130
8月 220 146
9月 230 159
10月 225 170
11月 245 184
12月 209 165


これをグラフにして、回帰分析を用いると次のようになります。



回帰分析によると変動費率72%、固定費1万円となっています。一見するとかなり変動費率が高く固定費の低い会社に見えます。(R2値も0.72とそこそこ高いので信頼性もありそうです)。(※R2値とは2つ項目の関係を近似線でどの程度の割合表されているかをみる指標です。この場合72%程度は近似式で表されていることになります)

ところが、これをもっと突っ込んで分析してみると次のようなこともわかります。



これは、7~9月と10~12月を分けて回帰分析した結果です。これを見ると実はこの会社、変動費率は53%で一定のまま、10月から固定費が17万円上がっていることがわかります。(しかもR2値は先ほどよりも高く、信頼性はこちらの方が高そうです。)

固定費がいきなり上がるようなことといえば、人員増加を真っ先に思いつくはず。したがって、この会社は10月から人員増加をした可能性が高いということがわかります。


では、次のような例の場合どうでしょうか。

  売上(万円) 費用(万円)
7月 180 130
8月 220 148
9月 230 159
10月 225 146
11月 245 150
12月 209 137


これをグラフにして、回帰分析を用いると次のようになります。



回帰分析によると変動費率39%、固定費60万円になります。(こちらはR2値で0.72とそこそこ高いので、信頼性もありそうです)。

ところが、これももう少し突っ込んで分析してみるとどうでしょうか?



先ほどと同じように7~9月と10~12月を分けて回帰分析した結果です。これを見るとこの会社は、10月に変動費率が54%から35%に下がって、固定費が32万円ほど上がっていることがわかります。

一般的に変動費を固定費にするような場合というのは、アウトソースしていたものを自社で抱えるようになった状態と考えることができます。ここでも最もわかりやすいのは、人員ではないでしょうか。したがって、この会社は10月から正社員を雇って外注していた仕事を自社で賄うようになったと考えることができます。

 

費用構造の変化を見抜く方法
上にあげた例では、きれいに費用構造の変化を見つけ出しましたが、実場面では数字やグラフを見ているだけでは費用構造の違いを見抜けない場合もあります。一般的に費用構造の変化を見抜くための方法には次のようなものがあります。

■利益率の変化から見抜く
利益率がある時期を境に大きく変化した場合、費用構造の変化を見抜ける場合があります。

■定性情報から見抜く
「最近○○社は人員を増やしているようだ」とか「設備投資を増やしている」、「広告を大々的にやっている」などの定性的な情報に基づいて、損益分岐点分析をすると費用構造の変化を見抜ける場合があります。

 

損益分岐点比率
損益分岐点比率とは、損益分岐点売上高と現在の売上高の比のことで、企業の安全性を測る指標のひとつです。

 損益分岐点比率=損益分岐点売上高/現在の売上高

一般的に、損益分岐点比率によって企業の体質は次のように分けられると言われています。

損益分岐点比率 体質
70%以下 超優良企業
80%以下 優良企業
80%以上 やや注意の企業
90%以上 危険な企業
100%以上 赤字企業


国内の中小企業では、損益分岐点比率は、90%前後だそうです。


また、損益分岐点比率と同義の数値に安全余裕率(次式参照)というものがあります。

 安全余裕率 = 1 - 損益分岐点比率

 

こちらもあわせてご覧ください

[ポイント図解]損益分岐点の実務が面白いほどわかる本 (中経出版)