Ns spirit 投資学・経営学研究室

投資・経営の基礎を網羅した「投資学・経営学研究室」のブログ版です。ビジネスパーソンに必須となる基礎知識・基礎スキル、仕事やキャリアに関する情報を中心に発信していきます。

企業買収時のシナジー効果の算出と配分、コントロールプレミアムとは

ここでは、企業買収によって発生するシナジー効果の算出方法とその配分、コントロールプレミアムについて解説します。

 

シナジー効果の算出方法
経済効果の算出は、買収による利益と、買収にかかる費用によって算出されます。ここでは、企業A、Bの価値PV(A)、PV(B)と合併後の価値PV(AB)によって考えてみます。

買収による企業Aの利益 = PV(AB) - (PV(A) + PV(B))
買収による企業Aの費用 = 買収資金 - PV(B)

例えば、
PV(A)=3,000百万円
PV(B)=1,000百万円
PV(AB)=5,000百万円
として、企業Aが企業Bに買収をしかけると、利益は1,000百万円になります。

この買収に、1,600百万円をかけたとすると、費用は600百万円になります。

 

シナジー効果の配分
各種シナジーによる経済効果がわかったときに、それを既存の株主にどう配分するかを検討することも重要になってきます。

上の例では、買収によるシナジーは1,000百万円に対し、費用は600百万円になっています。企業Aの費用は、企業Bの利益となり、企業B(の投資家)は、600百万円の利益を得ることになります。一方企業A(の投資家)は、シナジーの残り400百万円が利益になります。(下図①の場合)

買収費用が1,000百万円になれば、企業Bと企業Aの利益は、それぞれ1,000百万、0百万円、つまり企業Aにはシナジー効果が配分されないわけです。(下図②の場合)

もし、買収費用が1,200百万円になった場合、企業Aの利益はマイナスとなり、買収により企業Aの価値が毀損されてしまうわけです。(下図③の場合)





このように、シナジーに対して、買収費用をいくらで設定するかによって、企業AとB(のそれぞれの投資家)に配分される経済効果が変わってきます。買収費用が大きければ、買収する側の企業の株主は反発を起こしますし、他方買収される側の企業の株主からは歓迎されるというわけです(すなわち、買収しやすくなる)。

したがって、買収する企業は、シナジーをどう配分するかを慎重に考えなければなりませんし、買収する企業の株主は、そもそもシナジーはどの程度なのか、それは我々にいくら配分されているのかという視点をもっておく必要があるわけです。

 

コントロールプレミアムとは
小口の株式を買う場合と異なり、企業を買収する場合はその企業の支配権を手にすることになります。この支配権を獲得するために支払う対価のことをコントロールプレミアムといいます。

 

コントロールプレミアムの算出方法
コントロールプレミアムの具体的な数値は、過去のM&A事例で支払われたプレミアムが参考にして決められます。

例えば、過去の上場企業のM&Aで直近の株価水準と実際の買収価格がわかれば、コントロールプレミアムは次のように求められます。

 コントロールプレミアム = (買収価格 / 直近の株価) - 1

過去の数例を挙げてその平均値をとるという方法がよく用いられます。

一般的にコントロールプレミアムは20~50%くらいになります。

 

コントロールプレミアムの理論値
コントロールプレミアムは、フリーキャッシュフローの累計(DCF法)、EBITDA倍率を使うと、理論的には次のように関係として求められます。(各手法については株価の妥当性を判断するを参照してください)

 

www.nsspirt-cashf2.com



企業の純資産(簿価)には、将来の営業権や資産の含み益が含まれていません。一方で、EBITDA倍率にはそれらを含んだ上での価値と見られます。

しかし、EBITDA倍率からわかるのは、あくまで株式を保有することが目的であって、支配権までは欲していない投資家が考える価値基準と考えることができます。

支配権を握ると、企業の将来の収益によるリターンを全て享受することができるため、インカムアプローチに近い価値になると考えることができます。

実際に、複数の指標をもって企業の価値を評価する場合は、その指標にはどんな意味があるのか?どのような価値が含まれているのかを考える必要があります。