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PERとは?計算式・意味など【わかりやすく解説】

株式投資や、理論株価の算出などでよく出てくる投資尺度にPERがあります。

PERの計算式くらいは知っているという人も多いかもしれませんが、PERが本質的に何を意味しているのか?ということまで理解しているという方は少ないかもしれません。

この記事では、理論株価の算出にも使えるPERについてメリット・デメリットまで含めた詳細を解説していきます。

PERとは

PERとは、Price earning ratioの略称で、日本語では株価収益率と言います。

PERは、企業の時価総額と獲得した純利益の比率を表すもので、株式投資の中に出てくる最もメジャーな指標で、会社四季報や証券会社の会社情報、経済新聞には必ず登場する指標です。

PERの計算式は、以下のとおりです。

PER = 時価総額 / 純利益

ここで、株価をP、1株あたり純利益をEPSとすると、次の計算式のようになります。

PER = P(株価) / EPS(1株あたり純利益)

一般的にPERを計算するときは、純利益やEPSには、当期の予想額を使います。

PERは、一般的に低い方が株価が割安と見られ、高い方が株価は割高と見られます。

日本の株式の場合、PERは一般的に15~20倍程度ですが、会社や業種によって水準は大きく異なります。

PERは、理論株価を算出するためのマルチプル法の1つとしても活用されています。

参考記事:【理論株価】妥当な株価を計算するための3つの方法

PERが持つ2つの意味

PERには、その計算式から、2つの意味を見出すことができます。

PERは買収額を何年分の純利益で回収できるか示す

1つめは、PERが株式の益利回りの逆数を表すという考え方です。

もう1度、PERの計算式を見てましょう。

PER

= 時価総額 / 純利益

= P(株価) / EPS(1株あたり純利益)

たとえば、時価総額が200億円で純利益が10億円だと、PERは20倍になります。

言い換えると、この会社を買収したときに、純利益で買収金額を回収できるのに20年かかることを意味します。

PERには利益の成長率の観点も含まれている

PERは、期待利回りから企業の成長率を引いたものの逆数として考えることもできます。

PERの計算式をPについて整理すると、以下のような数式になります。

PER = P(株価) / EPS(1株あたり純利益)

P = EPS × PER 

もし、現在の株価Pが1年後のEPSと、1年後の株価に基づいて算出されているとすると、Pは次のように表せます。

P = (1年後EPS)/(1+r) + 1年後株価/(1+r)

ここでrは、将来のお金を現在の価値に割り戻すための割引率を示します。(一般的に割引率には、企業の資本コストが使われます)

さらに、1年後の株価を、2年後のEPSと2年後の株価で算出されたとすると、次のような計算式になります。

P = 1年後EPS/(1+r) + 2年後EPS/(1+r)2 + 2年後株価/(1+r)2

これを続けると株価Pは、割引率rを使って次のように表されます。

P = EPS/(1+r) + EPS/(1+r)2 
・・・ + EPS/(1+r)n + n年後の株価/(1+r)n

ここで、企業の利益成長を考え、EPSが成長率gで成長していくと考えると、
次のようになります。(ただし r>g とします)

P = EPS/(1+r) + EPS(1+g)/(1+r)2 +
・・・ + EPS(1+g)n-1/(1+r)n + n年後の株価/(1+r)n

このときn→∞とすると、n年後の株価は十分小さくなるので、無視できるようになり、以下の数式が残ります。

P = EPS/(r-g)

ここで、冒頭の「P = EPS × PER」の数式を見比べてみると、以下のように置き換えられます。

PER = 1/(r-g)  (ただし r > g)

この計算式から、PERが企業の資本コストと、成長率を織り込んだ数字であることがわかります。

たとえば、ある会社の資本コストが6%としたときに、PERが20倍の場合、その企業は市場から1%の成長率を見込まれていることを意味しますし、PERが40倍の場合、その企業は3.5%の成長率が見込まれていることを意味します。

PERのメリット・デメリット

投資尺度として、PERを活用する際のメリット・デメリットを解説します。

PERを使うメリット

PERのメリットは、計算が単純であることです。

純利益と時価総額が分かれば計算できるので、公開情報を元に電卓をたたけば、1分もかからずに計算できてしまいます。

PERを使うデメリット

PERには、2つのデメリットがあります。

事業活動に無関係な損益が計算に含まれてしまう

PERの分子となる純利益には、金利の利払い、利息の受け取り、特別損益、税金といった事業活動には直接関係しない要素が含まれているため、PERが本業以外の影響や、一時的な影響を受けてしまいます。

たとえば、含み資産の売却によって大きな特別利益が計上されてしまうと、PERは実態よりも低くなってしまいます。

そのため、大きな特別損益があった期の純利益を除外した修正純利益によりPERを計算したり、より簡便な方法として経常利益から税金を引いた修正純利益によってPERを計算したりする必要があります。

会計方針の影響を受けやすい

PERは、減価償却費などの会計方針の変更がダイレクトに反映されてしまいます。

実際に、かつての日産のように、会計方針の変更によってV字回復を演出した事例もあります。

以上のようなデメリットを考慮して、価値算定の実務においてはEV/EBITDA倍率をPERと併用して活用するケースが多いようです。

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PERを使う際のポイント

PERは極めて簡単に算出できる指標だというメリットがあります。

しかし、上記のように会社による差異が出やすいことがデメリットとしてあります。

そこで、PERで複数の会社の評価をするときは、デメリットの影響が出にくい使い方をするのがよいでしょう。

資本構成が似ている企業で比較する

先ほど書いたように、PERは資本コストと利益成長率で表されます。

資本コストは、企業の資本構成(有利子負債と自己資本の比率)によって、大きく変わってきます。

したがって、同じような資本構成の企業でなければ、資本コストの前提条件が大きく変わってしまうので、単純に数字だけでの比較ができなくなってしまいます。

一過性の損益や、会計方針の違いを是正する

こちらの先ほど書いたように、PERは特別損益、会計方針によって大きく左右される純利益を用います。

他社と比較する際は、特別利益や特別損失のような一過性の損益が生まれていないか、減価償却や棚卸資産等の計上方針が異なっていないかなどに注意が必要です。

PERを使って会社同士をより厳密に比較する場合は、特別損益の影響を省いた修正純利益を計算し、会計方針の違いを念頭に置いた上でPERを比較吟味する必要があるでしょう。

業種やビジネスモデル(収益構造)が似ている企業で比較する

PERが影響を受けやすい資本コスト、成長率、会計方針などは、業種やビジネスモデルによって決まってくる側面があります。

したがって、PERの比較対象としては、同業他社がベストです。

しかし、比較対象に同業他社がない場合や、同業の枠を越えて幅広く比較したい場合でも、業種やビジネスモデルが似ている会社を比較対象にするのが好ましいでしょう。

まとめ

以上がPERの解説でした。

PERには単純な計算式の中に、利回りや成長性の観点も盛り込まれていて、使いやすい投資尺度です。デメリットにさえ留意すれば、簡単に株価の妥当性を判断できる指標として活用できます。

  • 最も簡易的に株価の妥当性を測る指標である。
  • PERは株式投資額を何年で回収できるかを示すとともに、利益成長率の観点も加味された指標である。
  • PERには、簡易に計算できるメリットがある。
  • 一方で、PERは、純利益を使った計算する性質上、事業活動に無関係な損益や、会計方針の影響を受けてしまう指標である。
  • したがって、PERを使って、企業間の比較をする場合、資本構成、会計方針、業種やビジネスモデルの類似性がある方が望ましい。

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