雑記

トリクルダウン理論【富めるものが富めば貧しい者も豊かになる】

トリクルダウン理論 富めるものが富めば貧しい者も豊かになる

経済学の仮説の中に、トリクルダウン理論というものがあります。この記事では、そのトリクルダウン理論について解説していきます。

トリクルダウン理論とは

トリクルダウン理論とは、富めるものが富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウン)と考える理論のことです。トリクルダウン理論は、理論という名前がついていますが、科学的に証明されているものではありません。したがって、理論ではなく、トリクルダウン仮説と呼ばれることもあります。

全ての政策は以下の全体が成り立つときにトリクルダウンと見なすことができます。

  • その政策が裕福な企業や個人に対して短期的な利益をもたらす
  • その政策が長期的には全ての個人の生活水準を向上させるように設計されている

トリクルダウンが経済学にも引用されるようになったのは、世界大恐慌のときで、フーバー大統領の景気刺激策に対して名づけられたのが起源とされています。一例として、2008年のバンク・オブ・アメリカの救済措置と、共通農業政策(CAP)が挙げられます。

ラッファー曲線

ラッファー曲線とは、アメリカの経済学アーサー・ラッファーによって作られた税率と納税額の関係を示すグラフです。所得税率0%の場合、政府への税額は当然ゼロになります。一方で所得税率100%の場合、労働者は働くインセンティブがないので、やはり税額はゼロになります。税率を引き下げることにより、労働者は働くインセンティブができて、ある一定のところまで、政府の税収を増やす方向になります。そして税率がゼロに近づくと、再び税収は下がる曲線を描くことになります。

ラッファー曲線の例

f:id:n_spirit:20181010150512p:plain

ラッファーは、この曲線上で具体的な税率までは明らかにしていませんが、必ずこのように税収を最大化できるポイントがあるとしています。

トリクルダウン理論への反論

高額所得者の減税をすると、富裕層の可処分所得が増えて、新たな財やサービスを創出し、それが雇用を創出していくという考え方があります。しかし、政府が富の移転に介入しないことが基本となる自由経済においては、富裕層への優遇は、富裕層同士での財やサービスの消費にしか貢献せず、結果としてトリクルダウンは起きないという考え方もあります。

実際に、アメリカでは1980年から1988年にかけて、上限限界税率を70%から28%に低減して、税収を増やすことができましたが(ラッファー曲線のとおり)、一方で、低所得、中所得層に対する恩恵との間に相関関係があったことを示すものがなく、こうしたことがトリクルダウン理論に懐疑的な見方をされることのひとつの理由となっています。