Ns spirit 投資学・経営学研究室

経営学(経営戦略・ファイナンス・管理会計)、ロジカルシンキング、英語、キャリア、など、管理人のこれまでの経験に基づいて、ビジネスパーソン向けの記事を発信。

国際金融におけるトリレンマ 同時に達成できない3つのこと

国際金融のトリレンマとは

国際金融におけるトリレンマとは、以下3つのことを同時に満たすことは不可能であるというコンセプトです。

 

・固定相場制

・自由な資本移動

・独立した金融政策

 

国際金融のトリレンマによると、中央銀行は上記3つのうち、2つだけしか実現できないことになっています。例えば、世界金利が5%だとして、もしある国の中央銀行が国内の金利を2%に設定したとします。このとき、投資家は低金利の通貨を売って、高金利の通貨を買おうとするので、自国通貨は価値の低下圧力を受けることになります。

 

もし、ここで中央銀行が自由な資本移動を追求したとすると、自国通貨の価値を下げることを防ぐ方法は、外貨を売って自国通貨を買う以外になくなります。しかし、外貨は無限にあるわけではないので(自国通貨は発行できますが)、いつかは価値下落圧力を受けることになります。したがって、上記3つを同時追求することはできず、中央銀行はどれかひとつを諦める必要があります。

 

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トリレンマを防ぐオプション例

トリレンマを防ぐには以下3つのオプションしかありません。

 

1.固定相場制+自由な資本移動(独立した金融政策を諦める)

これは欧州のパターンです。欧州は統一通貨ユーロを発行することで、欧州内での固定相場と自由な資本移動を実現しました。かわりに独立した金融政策を放棄してます。この独立した金融政策を放棄したために、ギリシアやスペインは不況になっても金融政策をうてずにジリ貧になってしまいました。もし独立した金融政策ができれば、通貨安にして人件費や生産物の国際競争力を高めることができましたが、それは単一通貨のためにできませんでした。

 

2.独立した金融政策+自由な資本移動(固定相場制を放棄する)

これは日本やアメリカなどのパターンです。日本やアメリカは自国通貨の供給量を自国の経済状況にあわせて変化させることができ、かつ国外に自由に資本を持ちだすことができます。かわりに固定相場が実現できないため、常に自国通貨の価値の増減にさらされることになるわけです。しかし、固定相場を放棄するのは最も簡単な政策のため、多くの先進国ではこのオプションが選択されています。

 

3.固定相場制+独立した金融政策(自由な資本移動を放棄する)

これは中国のパターンです。中国は実質対ドルの為替相場を固定にしており、かつ自国の都合で金融政策を変えられるようにしています。一方で、資本移動には制限をかけているわけです。

 

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トリレンマの同時追求は金融危機を起こす

上記3つ、固定相場制、自由な資本移動、独立した金融政策の組み合わせを追求すると金融危機になることがわかっています。

 

例えば、1997年から1998年にかけて起きたアジア通貨危機では、この三位一体の実現不可能な政策を組み合わせたことによって起きました。まず、外国人投資家に対して事実上ドルとの間で為替レートの変動リスクない状態でアジア諸国に投資できるようにし、そして資本の流入にも制限をかけませんでした。さらにアジア諸国の短期金利をアメリカの短期金利より高く設定したのです。これにより、外国人投資家はアジア諸国に膨大な資金を投資して大きな利益を享受していました。

 

しかし、アジア諸国の貿易収支が赤字になって固定相場を維持するための外貨売り・自国通貨買いができなくなり、自国通貨の下落圧力が高まり、そこで投資先通貨で投資をしていた投資家が早急に資金を回収をはじめたため、アジア通貨危機を発生させてしまったのです。

 

通貨危機後に韓国やタイなどは、最も変更しやすい為替制度を変えることで危機への対処とし、結果として上記2に移行したわけです。