ビジネスその他

敵に塩を送るとは 意味・語源 現代のビジネスでは積極的に塩を送るべき

 

有名なことわざのひとつとして、「敵に塩を送る」という言葉があります。

てきにしおをおくる【敵に塩を送る】

敵が苦しんでいる時に、かえってその苦境を救う。 〔上杉謙信が、今川・北条の塩止めで苦しんでいる武田信玄に塩を送ったという逸話から〕

三省堂大辞林 第三版より

この言葉は戦国時代のエピソードが元になって生まれたもので、現代でも美談として語られ、実生活でもよく使われる言葉です。

ところが、少し調べてみると「敵に塩を送る」の元のエピソードには、美談としての側面よりも、ビジネスとしての側面が強かったようです。

私はそれを見て、そのビジネスとしての側面こそが現代ビジネスパーソンが学ぶべき考え方なのではないかと思っています。

この記事では、「敵に塩を送る」の意味・語源、使用例と、現代のビジネスで意味するところを書いていきます。

 

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「敵に塩を送る」意味・語源

敵に塩を送るというのは、敵対している相手に支援をするという意味になります。

なぜ相手を支援することを「敵に塩を送る」と表現するようになったのか?

これは戦国時代に敵対していた上杉謙信と武田信玄のエピソードに由来するとされています。

 

上杉・武田の地理関係

上杉謙信は現在の新潟県を中心に勢力を拡大、一方で武田信玄は現在の山梨県を中心に勢力を拡大していました。武田信玄のまわりには、今川家(現在の静岡県)、北条家(現在の東京都・神奈川県)という競合がいたのですが、彼らとは同盟を締結することで、武田信玄から見て北側に位置する上杉謙信と現在の長野県の領土を巡って対峙している状況でした。

実際、長野県の川中島というところで幾度にも渡って戦闘をしていました。

領土の位置関係は、以下の地図を参照ください。(赤丸は大まかな領土のイメージです)

 

上杉が武田に塩を送ったのが語源

上の地図を見てわかるように、武田家の領土は内陸にしかなく海に面していませんでした。そのため武田家としては、塩を外部との貿易によって調達せざるを得ない状況だったのです。

当初は同盟国であった今川家と北条家から塩を調達していたのですが、武田信玄が同盟を反故にして今川家に攻め入ったのをきっかけにして、今川・北条両家から塩の供給をストップされてしまったのです。

塩の供給を止められて困った武田信玄に対して手を差し伸べたのが、広大に日本海に面した領土を持っている上杉家でした。上杉家は敵対している武田家が自前で塩を調達できないことをわかった上で、武田家に対して塩を送っていたのです。

これが敵対した人に支援をする「敵に塩を送る」の語源になりました。

 

上杉謙信の商売説

このように美談で語られる「敵に塩送る」ですが、実際は上杉家の商売のためだったという説もあります。

実際、上杉家は塩を単に送っていたのではなく、武田家から塩の代金を受け取っていたとのことです。しかも、窮地に陥った武田信玄に対して相場よりも高い金額で売りつけることで、多くの利益をとっていたようなのです。

武田信玄としても、塩が無くては領土運営ができなくなるので、多少金額が高くても上杉家から塩を買わざるを得ない状況だったので、この貿易が成立したとのことです。

これに関しては、書籍でも次のように述べられています。

謙信は何も卑怯だからという理由で塩留めを拒んだのではない。いくら作戦として塩を送るまいとしても、民間の交流を完全に断つことはできない。無駄な行為であるし、これを機に今までのどおり塩の商取引をすれば、自国の利益になるという合理的な判断を下したまでだ。あえて塩を送るという行為はもちろんしていない。

教科書も間違っていた 歴史常識のウソより引用

しかし、世の中の人には美談の方がストーリーとして受け入れられやすいので、この話が美談として現代にまで残っているそうです。

 

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敵に塩を送るから得られる示唆

よく語られる美談としての「敵に塩を送る」というのも大事な考え方だとは思います。

例えば、スポーツの対戦で、相手が不可抗力で不利に陥ったときに、相手の一方的不利を承知で戦うのはフェアではないので、敢えて敵に塩を送るということがあります。

あるいは、ビジネスにおいても、自然災害などで競合のビジネスが立ち行かなくなったときに、敢えて手助けをするということもあるでしょう。

このように相手が窮地に陥っているときに、そこをさらに叩きにいくのではなく、手を差し伸べることで業界の健全な発展を促すというのは、とても素晴らしい心がけだと思います。

 

一方で、美談の側面ではなく、実態の側面から語られる「敵に塩送る」という感覚のほうが、むしろ現代のビジネスでは大事になるのではないでしょうか。

例えば、将来の競合となるかもしれない他社に自社の技術供与をするというな場面です。

自社で大切に育ててきた技術を将来競合になるかもしれない会社に渡すとは何事だという話ですが、もし自社だけで技術を保有していて事業運営して行き詰まってしまったときに、企業買収により望まない形で他社に技術を持っていかれてしまうこともありえます。

そうなるくらいなら、今のうちに競合になるかもしれない相手を抱き込みながら、技術を普及・発展させていき、そのお金をさらに別の技術に投資をした方が、会社として健全に発展できるかもしれないのです。

しかも、それをマーケットが価値を認めてくれている間にできる限り高値で供与できれば、それは決して誤った経営判断とは言えないでしょう。

 

先の上杉謙信の例では、塩を高く売れるときに売っておくという形で、自国の持つ資源を最大限活用したのでした。

ちなみに、武田家はこのエピソードの元となった出来事の15年後くらいに織田信長により滅ぼされましたが、上杉家は武田家より長く継続することができたのも、何か現代ビジネスにおける生き残り方を暗示しているようにも思います。(上杉家は北条家、今川家と比べても長く続きました)

 

まとめ

現代のビジネスにおいて、一社だけで何かを成し遂げるということがますます難しくなっています。

そのときに、自社の資源を出し惜しみせずに他社に積極的に活用してもらうように動く方が結果としてビジネスとして成功するという例も出ています。

例えるなら、塩だけでは顧客が喜ぶ美味しい料理が作れないので、素材を調達して料理を作れる会社に塩を送ることで両社ともに発展できるという考え方と言えるでしょうか。

 

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セーシン
元リーマン管理職+副業歴15年、海外事業・独立起業などの経験を踏まえて、仕事、経営、キャリア、海外に関することなど、ビジネスパーソンとしての戦闘力を高めるための情報を発信しています。 ツイッターアカウントはこちら