ビジネス雑学

ステークホルダーとは?意味・例・マネジメント上の3つのポイント

 

ビジネス誌やビジネス系のニュースなどでよく出てくる言葉として、ステークホルダーという言葉があります。

ステークホルダーとは、ある組織・団体を取り巻く利害関係者のことです。ウィキペディアによると以下のように定義されています。

ステークホルダー(英: stakeholder)とは、企業・行政・NPO等の利害と行動に直接・間接的な利害関係を有する者を指す。
日本語では利害関係者(りがいかんけいしゃ)という。具体的には、消費者(顧客)、従業員、株主、債権者、仕入先、得意先、地域社会、行政機関など。

 

企業が成長するためには、顧客だけでなく、ステークホルダーを満足させることが重要になります。

たとえば、目先の利益優先で従業員を疲弊させたり、取引先に無理なコストダウンを要求したり、地域社会の環境を悪化させたりすることは避けなくてはなりません。

私が以前お話を伺ったことのある東証プライム上場企業の社長は、

「経営者の仕事は、自分のやりたいことを進めるために全てのステークホルダーを説得すること」

と言っていましたが、仕事を進めていく上でステークホルダーから協力をとりつけて、巻き込むことはとても大事な要素になってきます。

 

会社組織におけるステークホルダー

各ステークホルダーは組織に対して多様な貢献をするとともに、それぞれ特有の見返りを期待しています。

 

会社組織に対する典型的なステークホルダー、彼らの組織への貢献、組織からの見返りを以下のように一覧にしました。

ステークホルダー組織への貢献期待する見返り
会社オーナー・出資者資金提供支配権、配当など
金融機関資金提供金利
経営者組織オペレーション雇用、賃金、名誉、自己実現など
従業員労働力、知識、スキル雇用、賃金、名誉、自己実現など
顧客・バイヤー製品・サービスの購買製品やサービスによってもたらされる便益
サプライヤー材料・半完成品・エネルギーなどの供給製品・サービスの購入
労働組合労働環境・労働条件雇用・従業員の参加
政府インフラ、行政サービス税金
地域社会特になし(ただし、敵に回すとやっかい)組織が災害や公害をもたらさない無害な存在であること

 

先の経営者の方の言葉を借りると、会社組織を運営して何かを進めようとするときには、これらのステークホルダーを説得しながら進めていく必要があるということです。

そして、ステークホルダーが説得されるためには、各ステークホルダーが利益を感じる内容である必要があって、ステークホルダーの利害の一致点を全力で探す行為とも言えるわけです。

プロジェクトにおけるステークホルダー

ここまで書いてきたのは、会社組織に対するステークホルダーでしたが、プロジェクトにおいてもステークホルダーの特定と協働が必要になってきます。

製品開発における代表的なステークホルダー

たとえば、ある製品を開発するプロジェクトを考えてみましょう。この場合のステークホルダーは、以下のような人達になります。(ここで、あなたはある事業部門の製品開発マネージャーだとします)

ステークホルダープロジェクトへの貢献期待する見返り
社長(経営陣)プロジェクトの推進の決裁、資金提供売上・利益の向上
事業部長(上司)人物金のリソースの調達売上・利益の向上
企画部門製品に対する市場観点での知見の提供革新的な製品、顧客にアピールできる多彩な機能
経理部門製品プロジェクトのファイナンス面での監査製品が事業KPIに結びつくこと
設計部門製品の設計技術的なチャレンジ、品質のよい製品
生産部門製品の製造作りやすい製品、製造コストの低い製品
品質部門品質リスクの評価品質のよい製品
営業部門製品の販売営業しやすい製品、他社と競合しても負けない製品
サプライヤー製品の材料の提供製品の部品供給に対する売上・利益
顧客売上・利益の源製品によって得られる便益

 

隠れたステークホルダーには注意

上記のリストにあげたのは、一般的なステークホルダーです。しかし、プロジェクトの推進にあたっては、隠れステークホルダーの存在に留意する必要があります。

たとえば、次のようなケースが考えられます。

 

現場のベテラン

どこの会社にも設計現場や製造現場にベテランがいて、ときにその人がブロッカーになることがあります。たとえば、製品を作る理由に納得がいかないと動かないケースが考えられます。

そうなると、良いとか悪いとか、組織の指揮命令系統上どうかということは別として、この人も立派なステークホルダーになってきます。

 

特定サプライヤーの担当者

もし、製品開発がある特定のサプライヤーの技術に依存しているケースがある場合、そのサプライヤーの担当者は重要なステークホルダーになる可能性があります。

本来プロジェクトリーダーは、個々のサプライヤーまで目が行き届かないかもしれませんが、この場合においては優先的に対応する必要があります。

 

影の力を持っている経営メンバー

他の事業部門を担当している経営メンバーですが、次期社長候補と言われているなど、何らかの理由で影の権力者である可能性があります。その場合は、個別に根回しをする必要があるでしょう。

 

ステークホルダー・マネジメントのポイント

私も新規事業や部門横断の製品開発プロジェクトを何度もマネジメントしてきましたが、そのときの経験を通じて、マネジメントのポイントをあげていきます。

ポイント1:ビジョンを示す

まず大事なことは、自分がそのプロジェクト(または会社)を通じて何を実現しようとしているのかを示すことです。社長や経理担当などに対しては定量的なもので訴える必要があるでしょうし、相手によっては定性的なもの(感情や義理みたいなこと)に訴えかける必要があるでしょう。

 

ポイント2:頻繁にコミュニケーションをとる

次に大事なのが、持っているビジョンを各ステークホルダーに丁寧に説明することです。

特に否定的な人に対しては、頻繁に何度も何度も説明をしたり、当初案を修正しながら妥結点を探すことが大事でしょう。

 

私の経験上、両手を挙げて賛同してくれた人よりも、最初は否定的だったけど後から納得してくれた人の方が、プロジェクトが進むに連れて力になってくれることが多いです。

 

これは否定的な意見を持っている人は、そもそも問題意識の高い人だからです。また、否定的な意見から肯定的な意見に変える仮定で頻繁に会話をすることになるので、最終的によき理解者になってくれるという側面もあるからです。

 

ポイント3:全てのステークホルダーの利害一致点を見い出す努力をする

頻繁なコミュニケーションのゴールは、基本的に全てのステークホルダーを満足させることです。

しかし、ステークホルダーが向いてる方向が違えば違うほど、その難易度は高くなります。

 

たとえば、製品開発プロジェクトの場合、部門ごとの利害の相反はあるものの、製品の販売を通じて会社業績がよくなる(さらにはそれにより給料が上がる)というのは利害の一致点であり、ステークホルダー・マネジメントの突破口になり得るものです。

 

一方で、会社経営は関わるステークホルダー間で利害の一致点を探すのが相当難しい仕事だといえるでしょう。上記のリストのように、期待している見返りが多種多様だからです。

 

しかし、一部のステークホルダーの意向を無視して仕事を進めると、後々になって手痛い失敗につながる可能性がありますし、窮地に陥ったときにサポートを得られなくなることもあります。そのため、ある局面では利害の一致を図れていなくても、別の局面で利害の一致に努めるなどの対応も必要になります。

 

まとめ

仕事をする中で、マネジメントポジションが上がれば上がるほどステークホルダー・マネジメントは重要になってきます。

適切な対処をすれば心強い協力者になってくれますし、対応を間違えると大きな障害となって立ちはだかります。

これからマネジメントポジションを目指す方は、ステークホルダー・マネジメントを早い段階から訓練していくことをおすすめします。