会社・経営者

LIXILはどうなる?株主総会で経営陣確定 旧トステム vs INAXの構図

 

ここ数ヶ月、新聞紙上を賑わしている会社がLIXILです。

2018年10月31日に前CEOだった瀬戸氏が解任されて、潮田氏、山梨氏を中心とした体制に急遽転換、その後株価の下落、指名委員会のプロセスの不透明さ、潮田氏の数々の??な発言がネット上でも話題になりました。

こうした状況に異議を申し立てたのが、LIXILに投資をしているマラソン・アセット・マネジメントなど外資系の機関投資家です。5月中旬に臨時株主総会を開催して潮田氏、山梨氏の解任を要求する株主提案が出される予定になっています。

 

しかし、今回の件はそもそも何が問題視されているのでしょうか。

一連の報道を取り巻く状況を簡単にまとめてみました。

 

LIXILの概要

LIXILは2011年に設立された会社です。

LIXIL自体は新しい会社ですが、前身は老舗の建材メーカー「トステム」、老舗の住宅設備メーカー「INAX」を中心に、旧「新日軽」、「東洋エクステリア」、「サンウェーブ」を加えた5社が合併してできた会社です。

名の知れた大手メーカー5社が合併したということで、設立当時は大きな話題になりました。

一方でLIXILという名前は、未だに十分な浸透をしておらず、よく聞くけど何の会社かわからないという人がまだまだ多いようです。

近年は海外企業の買収にも積極的で、ドイツやアメリカの水回り機器メーカー、イタリアの建材メーカーを買収するなどして、売上は約1兆7000億円という巨大企業になっています。

一方で、経常利益は2018年3月期は約650億円ありましたが、2019年3月期は大変厳しい結果になることが予想されています。第3四半期時点の予想純利益はぎりぎり黒字の15億円となっています。

 

経営陣の経歴

今回の一連に騒動に対して、関与している主な経営陣は以下の方々です。

 

潮田洋一郎氏

トステムを創業した潮田健次郎氏の長男です。

1953年生まれ、東大卒業後、1977年に旧トステム入社。シカゴ大学への留学経験を持っています。2011年LIXIL誕生時にCEOとなり、その後招聘した藤森義明氏にCEOを譲って、自身はLIXILグループの取締役会長になりました。2012年からはLIXILグループの取締役兼指名委員となり、経営を執行する側から監督する側の立場になっていました。

生年月日 1953 年 12 月 21 日
略歴
1977 年4月 当社入社
1980 年 12 月 当社取締役営業企画部長
1984 年5月 当社常務取締役商品本部長
1986 年 11 月 当社専務取締役広報・人事・業務改善・TQC・製造管掌
1990 年6月 当社取締役副社長海外事業・デザイン総括管掌(代表取締役)
1992 年9月 当社取締役副社長(代表取締役)
1993 年6月 当社取締役副社長経理本部長(代表取締役)
2000 年 11 月 当社取締役副社長経理財務管掌(代表取締役)
2001 年 10 月 当社取締役副社長
2003 年6月 当社取締役
2006 年 11 月 当社取締役会長 兼 CEO(代表取締役)
2006 年 11 月 トステム株式会社(現株式会社LIXIL)取締役会長 兼 CEO(代表取締役)
2009 年4月 同社取締役社長
2011 年6月 当社取締役 代表執行役会長 兼 CEO 兼 指名委員会委員長
2011 年8月 当社取締役 代表執行役会長 兼 指名委員会委員長
2011 年8月 株式会社LIXIL取締役会長(代表取締役)
2012 年6月 当社取締役 取締役会議長 兼 指名委員会委員
2017 年 10 月 当社取締役 取締役会議長 兼 指名委員会委員 執行役特命担当
2018 年 10 月 当社取締役 取締役会議長 兼 指名委員会委員(現任)

株式会社LIXILグループ ニュースリリースより

先ほど書いたように2018年10月に瀬戸氏を解任し、山梨氏とともに経営を執行する立場になっています。

 

ネット上では、経営者として??な発言で話題になっています。

 

山梨広一氏

山梨氏は元マッキンゼーパートナーで、25年間マッキンゼーに勤務していました。

生年月日 1954 年4月 18 日
略歴
1978 年4月 富士写真フイルム株式会社(現富士フイルムホールディングス株式会社)入社
1990 年1月 マッキンゼー・アンド・カンパニー入社
1995 年7月 同社プリンシパル(パートナー)
2003 年7月 同社ディレクター(シニア・パートナー)
2014 年4月 イオン株式会社顧問 内務統括担当
2014 年4月 同社専務執行役 内務統括担当
2015 年2月 同社執行役 経営企画担当
2015 年2月 同社執行役 経営企画担当 兼 電子マネー事業責任者
2016 年3月 同社執行役
2016 年5月 株式会社山梨広一事務所取締役(代表取締役)
2016 年6月 当社取締役(社外取締役)兼 報酬委員会委員長 兼 指名委員会委員
2017 年6月 当社取締役(社外取締役)兼 指名委員会委員長 兼 報酬委員会委員(現任)

株式会社LIXILグループ ニュースリリースより

 

元マッキンゼーの方に聞くと、パートナーとして相当に頭の切れる人だったそうです。

以下のように経営戦略に関する本もいくつか出されています。

一方で、今回なぜこのタイミングでLIXILの社長になったのか?と疑問視している人も多いようです。

マッキンゼーの元同僚であった大前研一氏も自身の記事で以下のように書いています。

結論から言えば、今のリクシルという企業を経営していくのは極めて難しく、社外取締役を2年ほどやっただけの山梨氏では歯が立たないだろう

(中略)

山梨氏はマッキンゼー出身者で私もよく知る人物ですが、外部から来た人間がこの状況を把握していくのは無理だと思います。中にはドイツのGROHEなど古い企業もあり、それを御していくのは至難の業です。

大前研一ニュースの視点Blogから引用

 

瀬戸欣哉氏

瀬戸氏は2018年10月31日に指名委員会を経て解任されたLIXILグループの前CEOです。

瀬戸欣哉氏の略歴
1960年6月:生まれ
1983年4月:住友商事入社(2005年まで)
1990年7月:米国住友商事デトロイトオフィス
プロダクトマネージャー特殊鋼製品担当
1992年7月:米国プレシジョンバーサービス社バイスプレジデント
1997年5月:米国アイアンダイナミクスプロセスインターナショナル社
代表取締役社長
1999年9月:住友商事鉄鋼第一事業企画部
eコマースチーム長・マネージャー
2000年10月:MonotaRO取締役
2001年6月:同社代表取締役社長
2006年3月:同社取締役代表執行役社長
2010年11月:米国ゾロツール社取締役(非常勤)
2011年8月:K-engine代表取締役社長
2012年3月:Grainger Asia Pacific代表取締役社長
2012年3月:MonotaRO取締役代表執行役会長
2012年4月:米国W.W.Grainger,Inc.バイス・プレジデント
2013年10月:同社シニア・バイス・プレジデント
2013年12月:英国GWW UK Online Ltd.(現Razor Occam,Ltd)CEO
2014年3月:MonotaRo取締役会長
2016年1月:LIXIL代表取締役社長兼CEO

流通ニュースより引用し追記

 

5月の臨時株主総会後に開催される6月の年次株主総会で、自らを取締役とする提案をすることを4/5に発表、記者会見をしています。

 

臨時株主総会での潮田氏、山梨氏の解任提案、および年次株主総会での瀬戸氏の提案に対する賛同者には、旧INAX創業家の伊奈啓一郎氏と、LIXILにへの合併前の旧INAX社長である川本隆一氏(上記写真の左側)の名前も入っています。

ネット上ではトステム創業家に対するクーデターとして話題になっていますが、さながら旧トステム vs 旧INAX陣営という様相にもなってきています。

 

なお、瀬戸氏は解任される2ヶ月前にカンブリア宮殿にも出演していました。

 

そもそも何が問題とされているのか

今回の件、そもそも何が問題とされているのでしょうか。

簡単にまとめると、以下の3つです。

  • LIXILの株式を約3%程度しか保有していない潮田洋一郎氏が、指名委員会で強引に瀬戸欣哉氏の解任と新経営体制への移行を決めたこと
  • そもそも潮田氏が指名委員会で「瀬戸氏が辞意を表明している」という虚偽の内容をベースに承認を取り付けた疑いが濃厚であること
  • 第三者機関の調査結果を提示したが、社外秘ということで半分以上を非公開としたまま内容を公開したが、恣意的に情報を隠しているのではないかと疑われている

 

機関投資家が問題視しているのは、潮田氏と山梨氏の経営者としての資質ではなく、あくまで経営体制の移行が適切なプロセスに沿っていななかったのではないか?ということです。

 

したがって、機関投資家が5月の臨時株主総会で求めているのは、

「潮田氏と山梨氏の解任という指名委員会での決定の無効化」

の1点であって、その後の経営体制については改めて決定すればよいという姿勢です。

つまり、潮田氏と山梨氏は一旦解任されても、再び取締役に返り咲く可能性があります。

しかし、そこに瀬戸氏と瀬戸氏を支持する旧INAX陣営が、6月の年次株主総会で取締役の提案をすることにしているのです。

 

株主総会の行方はどうなるのか

株主総会の行方は大きく2つに分けて考える必要があります。

 

5月の臨時株主総会

まず5月の臨時株主総会ですが、世論の動向を見ていると潮田氏、山梨氏には相当不利ではないかと見られています。

特に潮田氏に対する世論の反応は芳しくありません。

 

あるゴシップ誌にはLIXILの役員である女性が、昔の恋人だったという記事まで掲載されてしまっています。

(4/10追記)さらにこのような記事も出てきました。

 

わずか3%の株式保有で、社会の公器である上場企業を半分私物化していると見られてもおかしくない状況で、かつ経営者としての資質に疑問符が投げかけられていることから考えても、有利な材料が見つかってこないというのが現状のようです。

 

なお、4/12時点で臨時株主総会の日程は決まっておらず、機関投資家が裁判所に招集許可の申し立てをしているとのことです。(日経新聞記事より)

 

6月の年次株主総会

6月の年次株主総会では、瀬戸氏を中心とした取締役体制の提案がなされることになりました。

会見でも自信ありげに語っているように、世論の動向や事前の根回し状況からも、かなり勝算があると見ているのではないでしょうか。

今後の行方から目が離せません。

 

4/8追記:瀬戸氏 日経ビジネスインタビュー

4/8の日経ビジネス電子版によると、株主提案を決意したのは3月下旬だったようです。

実質2-3日で社外取締役の候補も選定できたとのことで、このことからも世間の多くの人が今回の会社のガバナンスのあり方に問題意識をもっているということではないでしょうか。

ここでも、瀬戸氏が今回の提案に対して相当な勝算と自信を持っていることが伺えます。

我々が提案する案と、指名委員会側の案が戦うことになったときに、指名委員会側の勝ち目は非常に低いと思います。合理的に考えて、我々の案に合意してくれる可能性は高いのではないでしょうか。

 

4/12追記 潮田氏の反論 東洋経済オンライン

4/12の東洋経済オンラインで潮田氏の反論が掲載されています。

1つだけ言えるとすれば、この(瀬戸氏が社長在任中の)株価を見れば、瀬戸氏が含まれるのは、どういうことなのかなと思う。

結局、問題が多かったと思っている人が多いから、今回の結論に至った。もし、まったく問題がなくて、良い経営者だと思っているのであれば、誰も(瀬戸氏辞任の人事案に)賛成しない。

(中略)

結局、瀬戸氏は(社長就任から)3年間なんら経営していなかったということだ。

元々は潮田氏に請われて社長に就任した瀬戸氏ですが、このインタビューを見ると両者の対立は決定的なところまで来ていると見えてしまいます。

 

4/18追記

4/18の記者会見で、潮田氏、山梨氏の取締役辞任が発表されました。

潮田氏は通期で大きな赤字をもたらした前CEOである瀬戸氏の任命責任をとっての辞任と説明しています。

これにより当初開催要求されていた臨時株主総会は、機関投資家の説明によると要求取り下げになる模様です。

6月の年次株主総会にて瀬戸氏の陣営が提案する新経営体制と、会社側(指名委員会側)が提示するであろう経営体制が審議されることになる見込みです。

 

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