製造業のフレームワーク

トヨタ生産方式とは 考え方の根本はTOCとかなり近かった

 

先日、縁があってトヨタ生産方式について、専門家から話を聞く機会がありました。

 

トヨタ生産方式というと、在庫削減、カンバン、ジャストインタイム(Just in time)が有名です。しかし、こうしたことは表層的な話でその本質はもっと違うところにあるという内容でした。

 

話を一通り伺った後に感じたのは、トヨタ生産方式にはTOCの考え方とかなり近いものがあるということでした。

 

しかし、それもそのはずでした。

 

TOC制約理論の生みの親であるゴールドラット博士は、ニュートン、ガンジーと並んで、トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一氏を3大ヒーローとしてあげているくらいだからです。

実際に本人もTOC自体はトヨタ生産方式をベースにして応用できるようにしたものだと言っているくらいなのです。

 

では、私自身はどのあたりに共通点を感じたのか?

 

ここからはトヨタ生産方式の話を聞いた中で、TOCと共通だと思った部分を紹介していきます。

 

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トヨタ生産方式とは

トヨタ生産方式とは、トヨタ自動車の元副社長である大野耐一氏が生み出したものです。

その起点になる考え方は以下の2つです。

  • 自働化
  • ジャストインタイム

 

自働化

自働化とは、異常があれば止まる、完了したら停まる、停まったことがわかることを原則としたものです。単に動くだけでなく、人がいなくても工程が自ら異常や完了を知らせることが大事だというわけです。したがって、単に自動化と書くのではなく、自働化とあえてニンベンの「はたらく」という文字を使って自働化を表現しています。

 

ジャストインタイム

これは必要なときに必要なもの必要なだけ供給するという考え方です。

自働化と合わせてジャストインタイムの根底にある考え方は、良いものを安くタイムリーに提供するという発想で、創業初期に資金が不足していた中で、余分なもの(在庫や不良品)作っている余裕がないところから生み出された考え方です。

 

安全在庫にバッファーを見たり、前倒しして作ったりしてみても、それがお金にならない限りは意味がなく、運転資金をいたずらに圧迫するだけです。

 

運転資金についてはこちらをご覧ください

【5分でわかる】運転資金(運転資本)とは CCCとは 計算方法 企業にとって、事業運営する上で必須のキャッシュとなる運転資金があります。特に中小企業において、利益が出ているのにこの運転資金が確...

 

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トヨタ生産方式の目指すところ

トヨタ生産方式の目指すところは、原価の低減と人財の育成だったそうです。

 

原価の低減

原価の低減というと、サプライヤーを叩いて買値を下げるという発想になりがちですが、トヨタはむしろサプライヤーの困り事を一緒に解決することで本質的な原価低減に取り組んできました。

そこには本質的な原価低減を一緒にやらずに単に価格を買い叩くだけでは、継続的は発展が望めないという思想がありました。

 

人財育成

トヨタ生産方式が最終的に目指したものは人財育成だったそうです。

 

安全在庫は持てない、サプライヤーと一緒に原価低減を考えないといけない。部下をこうした困った状況に置くことで、考える力を養う。それがトヨタ流の人財育成でした。

 

さらに現場重視で、現場で起きていることを徹底的に観察して、分析することによって、解決策を生み出す。トップ、マネージャーも部下に指示を出しながらも、自分でも解決策を考えてみる姿勢を持つ。こうしたことがトヨタの強みの本質でした。

 

そして、上の人間は決して「ああ、そうか」と簡単に納得せず、腹に落ちるまで徹底的に考えることを要求されていたそうです。

 

TOCとの共通点

トヨタ生産方式にはTOCとの共通点が多いと感じました。

ここでは3つ挙げていきます。

 

共通点1:滞留を見るところ

TOCについては、以下の記事を参照頂きたいのですが、簡単に言うとプロセスの制約となるボトルネックに目をつけて、そこを集中的に改善していこうという考え方です。

【徹底解説】TOC制約理論とは、CCPMとは、ボトルネックに着目した問題解決TOCとはTheory of Constraintの略で、70年代後半にイスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラット氏によって提唱された...

 

TOCの考え方では、ボトルネック以外のことの改善図るのは無駄だとはっきり言われています。全体最適を考えるなら、ただただボトルネックにのみ集中せよということです。

 

一方で、「工程の中でまず最初に見るのはどこですか?」という質問に対して、トヨタ生産方式の大野氏やその薫陶を受けた方々言っていることがあります。

 

それは、

「滞留しているところを見る」

ということです。

 

つまり工程の中で滞留しているところがあれば、必ずそこに問題があるはずだと考えるわけです。特に複数の工程が合流する部分というのは、滞留が起こりやすいそうで、そうしたところを丹念に見ていくそうです。

 

この考え方はTOCでいうボトルネックの考え方そのものです。

 

共通点2:人財育成につながるところ

トヨタ生産方式の最終目標は人財育成だと書きました。TOCは明確に人財育成が最終ゴールだとは言っていませんが、結果として人財育成につながる手法です。

 

システマティックに物事を考えて、一番問題となる部分(制約:ボトルネック)を特定し、その部分だけを集中して叩く。そして、また新たなボトルネックを探してそこに集中する。

 

こうすることが問題解決能力の高い人財、すなわちリーダーの育成につながっていくのです。

 

このあたり、経緯はTOCを主題にした「ザ・ゴール」にも描かれています。手軽に読めるコミック版を紹介しておきます。

 

共通点3:生産工程以外にも使える

トヨタ生産方式は単なる生産工程の改善手法ではないと明言されています。

現に滞留に着目してそこを改善するという発想は、生産以外にも事務や設計の仕事でも活用できます。

これはTOCが生産工程以外にも使える理論であるのと同様でしょう。実際にTOC理論を元にしたCCPMなどは、プロジェクトのプロセスを分解することで、滞留部分を明確にするような手法です。

 

CCPMについては、以下TOCの記事をご覧ください

【徹底解説】TOC制約理論とは、CCPMとは、ボトルネックに着目した問題解決TOCとはTheory of Constraintの略で、70年代後半にイスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラット氏によって提唱された...

 

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最後に

話を聞いた中で最後に印象に残ったのが、多くの会社でトヨタ生産方式の導入がうまくいっていないということでした。

それはトヨタ生産方式の本質的な理解が不足していることが原因とのことでした。カンバン、ジャストインタイムといった表面的なことだけ真似するのではなく、トヨタ生産方式が意味していることを理解した上で人財育成をすることこそが大事だということです。

 

私自身も話を聞くまでは何となくの表面的な理解だったのですが、実体験をしている方から本質を聞くことがいかに大事かを改めて認識できる機会だったと思っています。

 

トヨタ生産方式の本はこちらから

 

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