起業・副業

新規事業を立ち上げるための【事業計画の作り方】

会社から新規事業を検討しろと言われたけど、何をすればよいのかわからない

起業のために事業計画を考えたいけど、何から考えればよいのかわからない

このように悩んでいる人は少なくないと思います。

事業計画とは、簡単にいうと、以下の3つをセットにしたものです。

  • 事業コンセプト
  • 事業の実行計画
  • 上記に基づいた財務計画

私はサラリーマン時代に新規事業計画を何度か作りましたし、起業してからも何度か事業計画を作ってきました。

そうした経験を踏まえて、事業計画の作り方・立て方をこの記事で紹介していきます。

会社で新規事業を作る際や、独立して自分の事業を作る際に活用できます。

事業計画を立てる前の準備

事業計画を立てる前に問うべきことが2つあります。

1つは事業ビジョン、もう1つはWill-Can-Mustです。

事業ビジョンを立てる

新規事業を考えるときは、新規事業が目指すビジョンを明確にします。

新規事業なんて、儲かればよいんでしょ?

こんなふうに考える人も多いかもしれませんが、「私はこのビジネスで金儲けをします」とだけ言っても、多くの人を巻き込むのは難しいのが現実です。

そこで、ビジョンが必要になってきます。

ビジョンを立てる目的は次のとおりです。

  • 事業が目指す目的地が明確になる
  • ステークホルダーが協力する理由を作る

事業が目指す目的地が明確になると、個々の方針をブレずに決められるようになります。

たとえば、ビジョンが「人材マッチングビジネスを通じて地域社会の発展に貢献する」だとすると、事業の基盤となる地域以外での活動は、必然的にスコープから外れることになります。

言い換えると、ビジョンを明確にすることは、やらないことを決めることにもつながるのです。

また、ビジョンにはステークホルダーが協力する理由を作る効果もあります。

先ほども書いたような「お金を儲けます」という話だと、お金を目当てにした人しか集まらなくなりますが、そうした人たちはお金だけでつながる関係になってしまいます。

ビジョンを明確にすることで、志を同じにした仲間を集めることができ、より強固な共同体を形成することができます。

事業におけるWill-Can-Mustを整理する

Will-Can-Mustとは、それぞれ「やりたいこと」「できること」「するべきこと」を表します。

「やりたいこと」とは、ビジョンに描いた実現したいことともつながります。

事業を通じて実現したい未来のことです。

「できること」とは、現状のリソースでできることです。

新規事業を立ち上げるときに使えるリソースには、どのようなものがあって、そのリソースにはどのような強みと弱みがあるのかという観点で考えます。

ただし、「できること」を狭く捉えて制約にしてしまうのは考えものです。

現時点で「できること」だけを考えると、発想が広がらなくなってしまい、魅力のない新規事業になってしまうこともあるからです。

「するべきこと」とは、事業が解決すべき顧客の課題です。

全ての事業は、顧客が持つ何らかの課題解決につながっているはずです。

大きく深い課題の解決に寄与できるほど、成功の確率は高まりますし、解決できる課題が小さいほど成功は難しくなります。

事業計画立案:10のステップ

事業計画の立案ステップは、次の10個に分けられます。

  1. ターゲット顧客と課題の特定
  2. 顧客に提供する価値の決定
  3. 製品やサービスの具体化
  4. ビジネスモデルの策定
  5. 市場規模の算定
  6. 市場規模に対する獲得シェアの算定
  7. 売上の算定
  8. 売上を上げるためにかかる原価・販管費(人員計画、開発費、旅費等)の算定
  9. 必要投資の算定
  10. P/Lとキャッシュフロー計算書の算定

ターゲット顧客と課題の特定

先ほども書いたように、事業は、顧客の課題解決のために存在しています。

したがって、新規事業を考える際には、まずターゲットとする顧客と、その顧客が持つ課題を特定する必要があります。

顧客ターゲットを決めるときには、セグメンテーションによって市場を共通の特徴を持ったグループに細分化します。

さらにターゲットについて細かく考える際には、より具体的顧客プロフィール「ペルソナ」を設定します。

ペルソナの例には以下のようなものがあります。

  • 30歳、既婚女性
  • 年収:450万円
  • 1ヶ月に自由に使えるお金:50,000円
  • 趣味:旅行、ヨガ、読書
  • 外食費●円、旅行代●円、その他趣味●円

このようにターゲット顧客の解像度を高めることで、ターゲット顧客の抱える具体的な悩み、お金を払ってでも解決したいことはあるのかと考えていきます。

ペルソナが既存の製品やサービスで抱える悩みを見える化したものにカスタマージャーニーマップがあります。

カスタマージャーニーマップを作ることで、製品やサービスが当たる確率を高めることができます。

市場調査の手順は?

顧客に提供する価値の決定

解決すべき顧客の課題を特定できたら、顧客に提供すべき価値を考えます。

価値とはコンセプトと言い換えることもできます。

たとえば、多忙なビジネスパーソンをターゲット顧客としたときに、「手軽に食事を済ませられるところが近くにない」、「食事のために外出するのは面倒」という課題を持っているとします。

その際に、提供すべき価値(コンセプト)は、「好きな時間に好きな場所で出来たて食事が食べられます」になるかもしれません。

ここで、大事なことはいきなりフードデリバリーサービスなどと、具体的なサービスを考えるのではなく、顧客を主語にした顧客に提供できる価値を考えるのです。

こうすることで、解決策に対する視野を広く持つことができるようになります。

また、検討した提供価値は、顧客がユニークであると認知できるように、他社の価値と差異化して見せる必要があります。

その際には、ポジショニング分析の考え方が有用です。

製品やサービスの具体化

コンセプトができたら、具体的な製品やサービスを具体化します。

先ほどのコンセプトだと、フードデリバリーサービスかもしれませんし、実は保存が効く携帯食なのかもしれません。

この段階で、コンセプトと実行可能な策(主には技術)とのすり合わせをして、具体的な製品やサービスを描いていきます。

ビジネスモデルの策定

提供する製品やサービスが具体化できたら、ビジネスモデルを考えます。

ビジネスモデルを考える際には、リーンキャンバスが有用です。

リーンキャンバスとは、「実践リーン・スタートアップ」という本を書いたアッシュ・マウリャ氏によって提唱されたもので、新規事業を9つの視点から考えて、ビジネスモデルの完成度を確かめるために使われます。

具体的には、以下の項目に沿って新規事業のコンセプトを考えていきます。

市場規模の算定

その困りごと解決と製品やサービスには、どの程度の市場規模があるのかを考えます。

市場規模は公開データから推定することもできますが、公開データがない場合は算定してもよいです。

市場規模は金額ベースと個数・件数ベースの両方をおさえておいた方がよいでしょう。

金額ベースで市場規模の大小が判断でき、個数・件数ベースでそのサービス・製品が届けられる限界規模がわかるからです。

市場規模の算定する6つの方法

市場規模に対する獲得シェアの算定

市場規模がわかったら、獲得できるシェアを考えます。

市場シェアの算定方法はいくつかあります。

新規事業でどれだけ取れるか全く検討がつかないという場合は、想定シェアをいくつかのケースに分けても考えてもよいでしょう。

論理的に考える場合には、漏れ分析というやり方もあります。

漏れ分析とは、プロセスの中での漏れと最終結果にどのような関係があるのかを示すものです。代表的な漏れ分析にシェアの漏れ分析があります。

以下が漏れ分析の例です。

この競合して勝てるかどうかを考えるために、競合の戦略や商品の分析が必要になりますし、自社をその中でどうポジショニングするかという観点も必要になります。

売上の算定

市場規模と想定シェアがわかると、売上を算定することができます。

売上は一般的には、価格 × 個数・件数として表されます。

つまり、売上を算定するためには、価格設定を必要になるのです。

価格設定はマーケティング上、売上・利益を決定づける大きな要素になるとともに、シグナリング効果があるので、慎重に考える必要があります。

顧客獲得が何よりも大事だということであれば、安価で攻めるのが定石ですし、当面の利益やブランディングが大事なのであれば無闇に価格を下げるのはおすすめできません。

このように価格設定にもさまざまな考え方があります。

以下に価格戦略のパターンをまとめた記事が3つありますので、あわせてご参照ください。

価格戦略の基本は?

売上を上げるためにかかる原価・販管費の算定

売上を上げるためには、原価もかかりますし、人員も必要になります。

メーカーの場合、原価は仕入、材料費、加工費などから計算します。

一方で、無形サービスを販売する場合は原価はほとんどゼロのケースもあります。

販管費は、人件費、営業費、販促費、開発費、旅費等です。

また、費用は売上に応じて変動する変動費と、売上に関わらず一定の固定費に分けて考えるのがよいでしょう。

前段の売上もそうですが、一般的には事業開始当初5年くらいの間は月次で計画を考えていきます。

費用の前提を誤ると、事業がスタートしてからのマネジメントが大変なので、できる限り精度の高い根拠を持った数字にする必要があります。

したがって、これまで経験で費用が見積もれない場合は、その事業または似た費用構造を持つ専門家の助けてもらうことをおすすめします。

必要投資の算定

物づくりだと設備投資などの投資の算定が必要になります。

投資は、損益計算書(P/L)上は減価償却費として認識されますが、キャッシュフロー計算書上はワンタイムのキャッシュアウトとなるため、巨額な投資があると資金繰りへの影響がとても大きくなります。

したがって、費用と同様に専門家に金額を精査してもらったり、発注先の見込みがあるのであれば、ラフな見積りを入手しておくのが無難です。

P/Lとキャッシュフロー計算書の算定

以上のことができると、ほぼ自動的に損益計算書(P/L)キャッシュフロー計算書が出来上がります。

新規事業の場合、P/Lよりもキャッシュフローが重視されます。

なぜなら、どんなにP/Lが綺麗に仕上がっても、キャッシュが無ければ事業継続ができないからです。

まずはキャッシュの計画をきっちり把握して、いついくら資金が必要になるのかを明確にしておく必要があります。

事業計画書とプレゼンテーション資料

上記の検討内容を事業計画書とプレゼンテーション資料にまとめます。

事業計画書

事業計画書には、市場の調査結果や、財務数字などの細かい情報を載せます。

フォーマットに決まりはないですが、ワードやパワーポイントで作られるのが一般的です。

プレゼンテーション資料

プレゼンテーション資料は、新規事業のアイデアで相手を魅了するためのものです。

そのため、細かい数字よりも、シンプルさと見た目のインパクトにこだわって作られることが多いです。

新規事業のプレゼン資料をシンプルにまとめる方法

事業計画は積極的にシェアする

作った事業計画は積極的に説明して他者の視点を取り入れましょう。

積極的にシェアすると以下のようなメリットがあります。

  • そもそも課題意識にズレがあるかどうかがわかる
  • 相手が納得してくれるポイントと、そうでないポイントがわかる
  • 実際に説明してみることで、ロジックの甘さや説明順番の不適切さに気づける
  • 自分では当たり前のことが、相手にとって当たり前でなく補足説明がいることがわかる
  • 何度も話しているうちに、関係者が味方になってくれる(単純接触効果)

事業計画のたたき台を作った後は、次のような人に意見をもらうのをおすすめします。

社内関係者

社内の新規事業の場合は、社内関係者に説明して意見をもらうのがよいでしょう。

特に社内関係者は利害関係が複雑に入り組んでいるので、一同に会するとあまり意見をもらえません。

私は、かつて大企業で新規事業の計画を作ったときは個別に一人一人説明するようにしていました。

また、事業計画が承認された後に、関係部門に気持ちよく動いてもらうためにも、事前に意見をもらっておくというのは重要です。

俗にいう根回しです。

資金提供者

社外から資金調達をする場合には、資金提供をしてくれる相手にも積極的にシェアしましょう。

資金提供者とは、融資をしてくれる金融機関、出資をしてくれる法人や人です。

資金提供者はリターンや社会的意義、提供者との親和性などさまざまな観点で見てくれますが、いずれにせよ資金を提供する側の見方がわかるようになります。

また、シェアして反応を見ることで、自社事業と相性の良さそうな資金提供者をスクリーニングすることができます。

知り合いや家族など事業の素人

素人に意見をもらうことも、ときには重要です。

特に新しいコンセプトは社内の専門家だけが理解できても意味がないので、一般人にも理解できるところまで噛み砕く必要があります。

そのときに、知り合いや家族に見てもらうというのは、有効な方法です。

なお、このように利害関係のない人に、事業計画を説明して意見をもらうことを「壁打ち」と呼びます。

事業計画は常に修正する

事業計画は一度できたら完成ではありません。

先ほど書いたように、関係者に見せて修正することはもちろん、計画が走り出してからも都度修正する必要があります。

事業計画に書かれえいることの大部分は仮説なので、実際にやってみてわかることはたくさんあります。

  • 顧客の課題を解決するのに、もっと適した手段が存在した
  • 実際の市場規模が思った以上に大きくなかった
  • 費用が思った以上にかかった
  • 実際に精査して見積もりが出てきたら予想以上の投資額だった

このようなことは日常茶飯事です。

こうしたことを素早く修正した上で、次のアクションに反映していく必要があります。

事業計画を信じてアクションをする

事業計画は都度修正する必要があるとはいうものの、事業計画を立案した人は常にその計画を信じて行動するという信念が必要です。

想定外のことが起きても弱気にならずに、向かうゴールに間違いはないという信念を持つことで、困難に遭遇しても事業立ち上げを投げ出さずに進められるようになります。

これは大企業の新規事業であれ、起業であれ、同じようにあてはまることでしょう。

もちろん、当初考えていた方向性が厳しいということであれば、勇気をもってピボット(方向転換)する必要もなります。

まとめ

以上が事業計画立て方・作り方でした。

  • 事業計画を立案するには、大きく9つのプロセスがある。1.ターゲット顧客と課題の特定、2.顧客に提供する価値の決定、3.製品・サービスの具体化、4.ビジネスモデルの策定、5.市場規模の算定、6.市場規模に対する獲得シェアの算定、7.売上の算定、8.原価・販管費(人員計画、開発費、旅費等)の算定、9.必要投資の算定、10.P/Lとキャッシュフロー計算書の算定。
  • 事業計画は事業計画書とプレゼン資料にまとめる。事業計画書には事業を網羅的に説明できる細かい数字を記載するが、プレゼン資料は事業を魅力的に見せるためにシンプルでわかりやすくまとめる必要がある。
  • 事業計画ができたら積極的に関係者に説明をして、事業計画をよりよくしていくとともに、事業を進めるための味方を増やしていく。
  • 事業計画は実行場面でわかったことをベースに修正を加えていく。
  • 最後は信念が大事、事業を立ち上げるという信念を持って計画を進める。