仕事術

CCPMとは【関係者の協力を引き出せるプロジェクト管理手法】実体験を交えて解説

CCPMとは【関係者の協力を引き出せるプロジェクト管理手法】

TOC制約理論をベースにして考案されたプロジェクト・マネジメント手法として、CCPMがあります。

この記事では、CCPMとは何か、活用することによってどのようなメリットがあるのかについて、実体験を交えながら紹介していきます。

CCPMを使いこなせるようになると、効率的に仕事ができる人になるだけでなく、組織の生産性を上げられるようにもなります。

>>図解を使って丁寧にCCPMを解説

CCPMとは

CCPMとは、クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメントの略で、TOCの考え方をプロジェクトのマネジメントに活用するために編み出されたものです。

CCPMを活用することで、スケジュール上で最も重要となるクリティカルチェーンに集中して、重点的に管理してプロジェクトをマネジメントできるようになります。

CCPMを考案したゴールドラット氏は、プロジェクトをマネジメントするリーダーに関して、次のように述べています。

プロジェクトリーダーにとって、何がいちばん致命的かと言えば、集中力を失うこと、優先順位を取り違えてしまうことです。

出典:クリティカルチェーン

CCPMは、まさにリーダーが集中力を維持して優先順位を間違えないようにするための手法でもあります。

CCPMとよくあるスケジュール管理の違い

一般的なプロジェクトの工程表でよく見かけるのが、個々のタスクでバッファーを見ながら、コミットした納期に遅れが出ないようにマネジメントするという方法があります。

よくあるスケジュールに引き方

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しかし、このようにマネジメントすると、たとえ個々のタスクの早く仕事が終わっても、バッファーをあるだけ消費してしまい、後工程に渡すということが起きてしまいます。

なぜなら、人間はバッファーがあればあるだけ使ってしまうものだからです。

「早く報告したら、別の仕事を振られる」

「早く完成させたら、次はその時間をベンチマークにされてしまう」

等々が頭をよぎってしまうからです。

実際に起きること

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しかし、CCPMでは、個々のタスクにバッファーを見ずに、50%の確率でできるリードタイムをベースにスケジュールをひいて、バッファーをプロジェクト全体で共有して、みんなで消費するという考え方をします。

CCPMでのバッファーの考え方

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CCPMにおける工程表作成手順

CCPMでは、次の5つのステップで工程表をひいていきます。

選択と集中、目標すり合わせ、段取り、サバ取り、バッファー管理

ステップ1.選択と集中

先にもあげたようにマルチタスクは、生産性の阻害要因になるので、極力排除する必要があります。まずは、プロジェクト数を適切な数にまで絞り込んで、メンバー全員が集中して仕事をできる環境を作る必要があります。

ステップ2.目標すり合わせ

プロジェクトメンバー全員が何を目的にプロジェクト実行をするのか、何のために工程表をひくのかという認識を一致させます。認識を一致させるのは、プロジェクトメンバーが目的不明瞭のままプロジェクトを進めると、必ず細かい工程で無駄が生まれてくるからです。

その目標をすり合わせるためのフレームワークとして、次の3つの要素を含んだODSCを提唱しています。

O:Objective(目的)

プロジェクトを何のために実行するのか、完成することでどのようなよいことを起こそうとしているのです。

D:Deliverable(成果物)

プロジェクトによって生み出されるものです。たとえば、サービスの導入を目的としたプロジェクトなら、サービスそのものですし、それに伴うサービス開発のプロセスも成果物になり得ます。

SC:Success Criteria(成功基準)

プロジェクトが成功したと言える基準です。

たとえば、サービスの導入なら、納期通りできることが基準のひとつですし、上記にあげたプロセスが付随する成果物なら、以降のサービス開発で新たなプロセスが導入されるというのも基準になります。

また、担当したプロジェクトマネージャーが独り立ちできるなども成功基準になり得ます。

ステップ3.段取り

CCPMでは、ゴールから遡って工程表を引いていきます。

そのときに、以下3つの質問をすることで、後工程に移れる前提条件となる前工程を正確に特定できるようになります。

  • この工程の前にやることは何ですか?
  • 〇〇したら××できるのですね?
  • 本当にそれだけですか?
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この3つの質問をしながら、参加者全員で工程表を作っていくと、ベテランの思考プロセスを若手が追体験でき、若手の育成にもつながるのです。また、他部署のスケジュールに対する考え方や懸念なども、ここで全て洗い出すことができます。

それぞれのタスクは「〇〇する」という動詞形で記載していきます。

ステップ4.サバ取り(可能な限りアグレッシブに)

先にも書いたように、人間はバッファーがあればあるだけ使ってしまう生き物です。したがって、個々の工程からはサバを取り去って、50%の確率でできるリードタイムを入れていきます。

そして、できあがった工程表から、最も長く工数のかかるクリティカルチェーンを特定します。そして、今度はそのクリティカルチェーンに集中して、納期を短くする方法を考えます。その際の質問は以下の5つです。

  • 短くするうまい方法はないですか?
  • タスクを並行でやれることはないですか?
  • 段取りを見直すことで、短くすることはできませんか?
  • 経営幹部から助けてもらうことで、短くする方法はありませんか?
  • 本当に五分五分ですか?

従来型のスケジュールの作り方だと、期間を短縮するとなると、関連部署同士の対立が起こることがあります。しかし、関連部署全員でODSCを明確にして工程表を作ると、工程表を目標どおりにするために、どうすれば目標を達成できるか、みんなが知恵を絞るようになります。つまり、プロジェクトスタート前から協力体制ができるようになるのです。

最後にバッファーができたら、そのバッファーをざっくり半分にします。なぜなら、各工程の五分五分の確率で期間どおりに完成できるので、バッファーもざっくり50%で見ておけばよいという考え方です。

バッファーは最後にまとめる

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ステップ5.バッファー管理

CCPMの工程表が完成し、プロジェクトが実行に移されたら、バッファー消費量を管理しながら、マネジメントします。以下がその例です。

バッファーマネジメント表

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バッファーマネジメント表 運用例

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このように進捗率に対するバッファー消費量で管理すると、誰が見てもプロジェクトの状態が一目瞭然になります。

プロジェクト外にいる関係者にもプロジェクトの問題を見える化することができます。

また、個々のタスク管理では、プロジェクトマネージャーが率先して、以下の質問を現場の担当者にしていく必要があります。

  • あと何日かかりますか?(×どれくらいできた?)
  • 問題があるとしたら何ですか?(×なぜ問題が起きたのか?)
  • 問題がありそうなら、何か助けられることはないですか?(×何とか挽回しろ!)

決して、怖い顔をして「何で遅れたのか?」とか、「何とか挽回しろ」などと言ってはいけません。

問題が起こる前に先手管理をする質問をすることが大事なのです。

CCPMのメリット

私も実際にCCPMを使ってみましたが、その中で感じたメリットは以下のとおりです。

  • 各担当者は50%の確率のスケジュールを納期として必死に頑張る(担当者は共有バッファーを使うことが悪だと感じる)
  • 関係部署がプロジェクトのゴールに向けて協力できる(部署間対立を減らせる)
  • 経営陣に対してプロジェクトの状態を可視化できる(経営陣が現場の細かい進捗を聞かなくても安心してもらえる)
  • 遅れリスクに対して、必要に応じて経営陣まで巻き込んで先手でマネジメントできる

なお、CCPMでは、プロジェクトゴールから工程を引いていくので、途中まで進んでしまったプロジェクトでも適用可能です。

ちなみに、CCPMは世界に有名なボーイング社でも活用されていました。

以下にプレゼン資料のリンクを貼っておきます。

ボーイング社のプレゼン(英語)

また、日本にもいくつか事例紹介があります。

CCPM-日本の事例

まとめ

以上、CCPMの解説でした。

  • CCPMはTOC理論をベースにしたもので、クリティカルチェーンのタスクに集中して管理するプロジェクトマネジメント手法である。
  • CCPMはでは個々のタスクでバッファーを確保するのではなく、個々のタスクは五分五分でできるリードタイムにして、プロジェクト全体としてバッファーを管理する。
  • CCPMはゴールから逆算して工程を考えるので、プロジェクトの途中段階からでも適用できる。
  • CCPMを使うことで、部署間対立を減らせ、経営陣に対してプロジェクト進捗を可視化でき、担当者が各自の持ち分を必死に頑張ってもらうことができる。