財務諸表の見方・読み方・分析

【徹底解説】貸借対照表(バランスシート)の読み方・見方

 

「貸借対照表って何だっけ?」

ビジネスパーソンとして、大事な財務諸表の一つである貸借対照表ですが、今さら何のことか聞きにくいという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、そんな今さら聞けないと思っている方に向けて、貸借対照表の概要を解説していきます。

 

貸借対照表とは

貸借対照表とは、資本の調達先と運用形態を表した表のことです。

下の表に貸借対照表の概要を示します。

 

貸借対照表では資産の部と負債、資本の部が必ず釣り合うように作られます。そのため、貸借対照表のことをバランスシートとも呼びます。

よくB/Sと書いたり、言葉で「ビーエス」などと略すこともあります。

 

貸借対照表の一例

貸借対照表、バランスシート

貸借対照表は大きく資産の部と、負債の部、純資産の部に分けられます。

資産の部

貸借対照表の左側のことで、資本(調達資金)の運用形態(=資産)を表しています。つまり貰ってきたお金をどのように使っているかを示しています。

資産とは利益を生み出すため必要な資金や物です。資産の部は原則として、現金化しやすい順に並んでいます。

 

負債の部・純資産の部

貸借対照表の右側は資本(調達資金)の調達先を表しています。つまり、どこからお金を貰ってきているかを示しています。

右側は、さらに表のように負債(他人に返す義務のあるお金)と純資産(=資本、返す義務のないお金)に分けられます。

負債とは第3者に対して返済の義務がある債務のことです。負債の部は原則として、返済を急ぐ必要のある順に上から並べられます。

純資産とは会社の利益の積み上げと、投資家から集めた資金のことです。

 

貸借対照表の見方・読み方

貸借対照表を見るときは大きく5つのブロックに分けて考えます。

左側の資産の部分を2つに分けて、右側も負債を2つに分けて資本とあわせて合計3ブロックで見ていきます。

それぞれの項目を以下に説明していきます。

 

流動資産

流動資産とは1年以内に現金化が予定されている資産を表します。

流動資産には主に当座資産棚卸資産があります。当座資産とは現金や有価証券など比較的短期に資金化ができるものと、棚卸資産のように販売というハードルを越えなければ資金化できないものを表します。したがって、棚卸資産は在庫商品の陳腐化などによって資金化できないケースもあります。

現金・預金
文字通り、手持ちの現金や銀行に預けてある預金です。

有価証券
有価証券とは他の会社の株式などです。

売上債権
通常、企業同士のお金のやりとりは手形や掛けで行います。売上債権とはそのときの受取手形や売掛金のことです。

棚卸資産
棚卸資産とは作りかけの商品や在庫のことを言います。

 

固定資産

固定資産とは長期にわたって使用、保有できる資産をいいます。固定資産には主に有形固定資産と無形固定資産があります。有形固定資産とは建築物もったものをや車両のように具体的な形態を持つものです。無形固定資産とは特許権のように具体的な形態を持たないものです。

 

※繰延資産
資産の部には繰延資産もあります。繰延資産とは流動資産にも固定資産にもならない資産で、それ本来は損益計算上は費用として処理されるものです。しかし、費用としての支出の効果が長期に渡って期待できるので、支出時に一気に費用化せずに貸借対照表上は資産として扱っています。

 

流動負債

流動負債とは買入債務、短期借入金等、1年以内に返済を要する負債のことです。また、1年以内に返還見込みのある長期借入金や社債なども流動負債になります。

 

買入債務
買入債務とは支払手形や買掛金のことです。受取手形と逆で、取引先に対しての債務になります。

 

固定負債

固定負債とは1年を超えて支払いの義務が発生する負債のことです。長期借入金や引当金、社債などが該当します。

 

純資産

純資産の中身は大きく4つに分けられます。

株主資本
株主資本とは、純資産の中でも株主に帰属するものと考えられる項目のことです。

資本金、資本剰余金
資本金、資本剰余金とは株主からの拠出分の資金のことです。

利益剰余金
利益剰余金とは過去の利益の蓄積分から利益準備金を引いたものです。この利益剰余金は毎期の利益の中から、株主への配当や役員賞与を差し引いたものになります。

準備金
準備金とは会社の充実を目的として商法で積み立てることが義務付けられた資金のことです。準備金には利益から積み上げる利益準備金と資本金から積み立てられる資本準備金があります。

自己資本
自己資本とは、株主資本と評価・換算差額等を足したもので、会社の資本と帰属するものを表します。

自己資本  = 株主資本 + 評価・換算差額等
= 純資産-新株予約権-少数株主持分

少数株主持分
少数株主持分とは、第三者が持っている連結対象の会社(子会社)の株のことで、資産や負債とは独立してバランスシートに記載されるものです。連結財務諸表に特有の科目になります。

貸借対照表からわかる企業の安全性

貸借対照表単独でできる財務分析として、安全性分析があります。

以下に6つの安全性に関わる指標を解説します。

 

流動比率

流動比率とは、流動資産によって流動負債をどの程度返済可能かを見るための指標です。流動比率は貸借対照表の項目を使って、次のように計算されます。

流動比率 = 流動資産/流動負債

流動比率は200%以上が望ましいとされていますが、現実的に200%以上の企業は少なく、一般的には120%~140%であれば健全であるとされています。

 

しかし、実際には流動比率が100%を切るような企業も実際にはたくさんあります。ただ、流動比率が低い場合でも、金融機関の支援がしっかりしているような場合は、大きな問題ないと判断できます。

最近では余剰キャッシュの持ちすぎはM&Aの対象になることから、意図的に流動比率を低めにする場合もあるようです。

 

なお、流動資産を見る場合には、現金化の目処が立っていない不良債権や不良在庫に注意をしておく必要があります。流動比率よりも厳しい指標として当座比率があります。

 

当座比率

当座比率とは、当座資産(流動資産から棚卸資産を引いたもの)によって流動負債をどの程度返済可能かを見るための指標です。当座比率は貸借対照表の項目を使って、次のように計算されます。

当座比率 = 当座資産/流動負債

当座比率は80~100%以上が望ましいとされています。

 

棚卸資産は商品価値の低下により、そのまま不良在庫になる場合があります。そのため、流動負債の返済は現金化の容易な当座資産で行うべきという考え方に基いているのが当座比率になります。当座比率は、同じような指標である流動比率に比べると厳しい指標であるといえます。

最近では、余剰キャッシュが多いとM&Aの対象になることから、意図的にキャッシュを減らし当座比率を低くしている企業もあるようです。

 

自己資本比率

自己資本比率とは総資本に対する自己資本の割合を示す指標です。

自己資本比率=自己資本/総資産
(自己資本 = 純資産-新株予約権-少数株主持分)

自己資本比率は30%を超えているのが望ましいとさています。ただし自己資本比率が高いからといって投資に値する企業ということではありません。

その資本をいかに有効に活用するかが大事なのです。日本では比較的自己資本比率が低い企業が多く、一桁の企業もあります。

 

純資産比率

2006年5月からの新会社法施行により、自己資本と純資産は違うものを示すようになり、項目にも変更がありました。

  純資産 = 株主資本(評価・換算差額等含む)
        +少数株主持分+新株予約権

純資産には、今まで株主資本とか自己資本と呼ばれていた「株主資本(評価・換算差額等含む」に少数株主持分と新株予約権が新たに付け加えられました。

 

したがって、上記の自己資本比率の他に、純資産比率という形でも安全性を見る場合があります。(ただし、純資産は上述のようにこれまでの自己資本とは異なるため、純資産比率と従来の自己資本比率とは連続性のない指標になります。)

 純資産比率 = 純資産/総資産

 

固定比率

固定比率とは、固定資産を自己資本によってどの程度賄うことができるかを見るための指標です。固定比率は貸借対照表の項目を使って、次のように計算されます。

  固定比率 = 固定資産/純資産

固定比率は、同じようなの指標である固定長期適合率に比べると少し厳しい見方といえます。

一般的に、固定比率は100%以下であれば、望ましい水準とされていますが、製造業などは100%を超えるところも多く、160%以下ならまずまずの数字といわれています。

 

固定長期適合率

固定長期適合率とは、固定資産をどのような資金で賄っているか目安をつけるための指標です。固定長期適合率は、貸借対照表の項目を使って、次のように計算されます。

固定長期適合率 = 固定資産/(純資産+固定負債)

固定長期適合率では、固定資産が自己資本と比較的返済期間の長い固定負債でどの程度賄えているかがわかります。同じようなの指標である、固定比率に比べると少し甘い見方といえます。

一般的に、固定長期適合率は100%以下であれば、望ましい水準とされています。

固定長期適合率は、流動比率と表裏一体の指標です。流動比率の改善は、固定長期適合率の改善につながります。

 

安全性指標の改善方法

最後に安全性指標の中でもよく使われる2つ、流動比率と自己資本比率の改善について解説をします。

流動比率の改善

流動比率を改善するには、次のような方法があります。

 

固定資産を減らし流動資産を増やす

固定資産を売却によって減らし、換金により現金を増やす方法です。

この方法は、バランスシートを肥大化させることなく流動比率を増やすことができるので、比較的デメリットが少ないといえます。

 

固定負債を増やし流動資産を増やす

長期借入金や社債を発行し、現金を増やす方法です。

この方法は、短期的な改善方法といえます。なぜなら、借入金や社債は期日までに現金で返済する必要があるためです。また、収益性の改善がないとROAの低下を招きます。

 

資本(純資産)を増やし流動資産を増やす

増資によって資本を増やし、現金を増やす方法です。

この方法は、資本の肥大化を招きます。収益性の改善がないとROEが低下し、株主価値の減少につながります。

 

自己資本比率の改善

自己資本比率を改善する方法には次の2つがあります。

 

負債を減らす

負債を減らす方法として考えられるのが債権者(銀行など)に借金を返済するという方法です。

 

自己資本を増やす

これは第三者割当増資(株の発行)をしたり、純利益を内部留保して利益剰余金を増やすことで実現できます。

 

ただし、自己資本比率が高いほうが安全であるのは間違いないですが、ファイナンスの観点から言うと、負債には節税効果というものがあり、経営の安全性が保てる範囲で負債を上手に使った方が企業価値を高められることがわかっています。

 

節税効果の詳細は以下の2記事をご覧ください。

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まとめ

貸借対照表のポイントをまとめます。

  • 貸借対照表から、ある時点でのお金の使い道(資産)と調達先(負債および純資産)がわかる
  • 貸借対照表は大きく5つのブロックに分けて考えることができる
  • 貸借対照表を使うと企業の安全性分析ができる
  • 流動比率の改善方法は大きく3つある
  • 自己資本比率の改善方法は大きく2つある

ここまでわかれば、まずはビジネスパーソンとしての第一歩はクリアできたといえるでしょう。

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