Ns spirit 投資学・経営学研究室

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【徹底解説】残存価値(ターミナルバリュー)とは 継続価値とは

残存価値(ターミナルバリュー)の算出方法
企業価値にせよ、設備投資計画にせよ、DCF法で予測する最終年度においては、企業あるいは設備の残存価値を算出する必要があります。ここでは、その残存価値の算出方法を3つ紹介します。

1.継続価値による算出(DCF法による永久還元方式の活用)
2.清算価値による算出(資産価値の金額換算)
3.マルチプル法による算出(PERやEV/EBITDA倍率の活用)

 

1.継続価値による算出
残存価値の計算方法のひとつに、継続価値での計算があります。これは、事業が未来永劫続くという前提のもとでの残存価値になります。

未来永劫続くという前提では、残存価値は次のようになります。

■最終年度の次年度以降CFが一定の場合
 残存価値 = [最終年度の次年度のCF/割引率 ]

■最終年度以降CFが一定成長する場合
 残存価値 = [最終年度の次年度のCF/割引率-成長率]


キャッシュフロー計算上は、この残存価値を最終年度の現価係数で割って、現在価値に直します。

継続価値での計算は、主に企業価値や事業価値における残存価値計算に用います。


■継続価値を求める際の注意点
最終年度に継続価値を用いる場合は、成長率をいくつに設定するか慎重に判断する必要があります。なぜなら、残存価値を継続価値で求める場合、キャッシュインフローの大部分を残存価値が占めることになるためです。

したがって、企業の価値や投資の価値を判断するときに継続価値を用いる場合は、納得性の高いロジックを組んでおく必要があります。

もし、明確なロジックが組めない場合は、あり得る範囲の中でいくつかパターンを作って計算することが必要になります。

 

2.清算価値による算出
残存価値の計算方法には、もうひとつ企業(あるいは設備)を清算した場合の計算があります。これは、貸借対照表上の資産と負債を全て簿価で清算したという前提での計算になります。つまり、清算価値計算での残存価値は次式で表されます。

 残存価値 = その年度における資産の時価-負債の簿価

清算価値による計算では、時価を用いるのが正しいのですが、残存価値を考えないといけないような何年か先の時価を求めるのは容易ではないため簿価を使います。

したがって、清算価値は、企業や事業の残存価値を計算するには不向きで、期間が限られている設備やプロジェクトの評価における残存価値として用いられるのが一般的です。

■プロジェクトにおける残存価値
プロジェクトにおける残存価値は資産と負債の構成要素のなかで、プロジェクトをGOさせたことに起因する要素だけを抜き出して次のように求められます。

 残存価値 = 設備投資額 - 減価償却の累計 + 運転資本の増加分


■設備を廃棄する場合
さて、プロジェクトの場合、そのプロジェクト終了後に生産打ち止めとなる設備の簿価で残存価値を考えるということは、売却あるいは他のプロジェクトに転用することを前提としています。しかし、樹脂の金型など商品が無くなれば不用になるようなものは、生産が終われば廃棄される可能性が高くなります。

この場合、設備投資の残存価値はゼロとして計算します。ただし、設備を廃棄するということは、貸借対照表上の固定資産を減らすことになり、その減少分は損益計算書上の特別損失として計上します。損失を計上するということは、その分だけ税金を節約できるということなので、節税分のキャッシュインを最終年度で見込む必要があります。

 残存価値 = 設備投資の廃棄損×税率 + 運転資本の増加分

 

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継続価値と清算価値の使い分け
継続価値と清算価値は、事業のライフサイクルを前提に使い分けます。今後半永久的に事業が継続される場合は、継続価値を用いて、予測期間内に事業を終わらせるような場合は清算価値を用います。

したがって、企業のように永続して存在することが前提の場合は継続価値を、製品プロジェクトのようにある期間でライフサイクルが終わってしまうような場合は清算価値を用います。

一般的には、大きな成長をしていくような企業の場合、「継続価値>清算価値」となり、破綻を迎えるような企業の場合、「継続価値<清算価値」になります。

 

3.マルチプル法による残存価値算出
上記の他に、マルチプルを用いて残存価値を算出する方法があります。この場合用いられる代表的なマルチプルは、PER、EBITDA倍率などです。

この場合、予測期間の最終時点における、利益(PERの場合:純利益、EBITDA倍率の場合:償却費を差し戻した後の営業利益)を予測し、妥当なPERもしくはEBITDA倍率を掛け合わせてそこから有利子負債を差し引いて株主の価値を算出します。

■PERを使う場合
 予測最終時点の株主価値
  = 予測最終時点の純利益 × 妥当なPER

妥当PERとしては、現在の業界のPERを用いたり、過去のPER水準から推定する場合もあります。(例えば10~20倍のレンジで考えるなど)

 

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■EBITDA倍率を使う場合
 予測最終時点の株主価値
  = 予測最終時点の償却費を差し戻した利益 × 妥当なEBITDA倍率
     +現金 - 有利子負債

 

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実務ではマルチプル法は、継続価値法の妥当性を検証するために用いられます。

 

(参考)継続価値計算式の証明
最後に、上述した継続価値の計算式導出過程について説明します。

初期投資額をI、毎年のキャッシュフローをCF、割引率をrとすると、4年目での残存価値をRとすると、毎年のキャッシュフローの現在価値は、次のようになります。




もし5年目以降のキャッシュフローがCF5で一定だった場合、Rは次のように求められます。

R = CF5/(1+r)^5 + CF5/(1+r)^6 + ・・・ + CF5/(1+r)^n

未来永劫事業が続くと考えると、このnは無限大まで続くことになります。ここで、両辺に1+rを掛けると式は次のようになります。

(1+r)R = CF5/(1+r)^4 + CF5/(1+r)^5 + ・・・ + CF5/(1+r)^n
(nは無限大まで続くので、1+rを掛けても終点はやはり無限大です)

この式と、先ほどの式の差をとると、次のようになります。

 rR = CF5/(1+r)^4
 R  = [CF5/r] / (1+r)^4


したがって、この場合の残存価値は、5年目のキャッシュフローを割引率rで割ったものに、4年目の減価係数を乗じる形で算出されることになります。

以上のように、継続価値は最終年度の次年度のキャッシュフロー(CF5)を割引率(r)で割ったものであることがわかります。

 

まとめ
いかがでしたでしょうか。DCF法では、企業価値を算定する際に、財務予測は5~10年程度で打ち切り、そこから先は残存価値・継続価値を活用することが一般的です。

 

しかし、残存価値は、企業価値に大きく影響を及ぼすために、上記に示したようにいくつもの方法を試して、比較吟味することが大変重要となることを覚えておきましょう。

 

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