Ns spirit 投資学・経営学研究室

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【徹底解説】ポートフォリオを組むとなぜリスク分散されるのか 理論を紹介

ポートフォリオとリスク分散
ポートフォリオとは、様々な資産を組み合わせて、リスクを低減して、リターンを最大化するような資産構成のことをいいます。一般的に、互いに連動性のない資産でポートフォリオを組むと個別株式リスクが軽減されるといいます(マーケットリスクまでは取り除けません。マーケットリスクはβ(ベータ)で考えます)。

 

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ここでは、このリスク軽減の状況を定量的表現で解説していきます。

 

単一銘柄に投資をした場合のリスク
投資家が、次のような電力株に投資したと仮定します。

■電力株のリターン

事象 確率 リターン
円高 40% 5%
横這い 20% 3%
円安 40% 1%


この電力株は、為替の影響は受けにくいのですが、円高になると外国人投資家が通貨価値上昇を狙って投資をしてくると仮定します。

このときの、投資家のリスクを計算します。

リスクの計算のために、まずリターンの期待値Eを求めます。

 E = 0.4×5% + 0.2×3% + 0.4×1%
   = 3.0%

このときリスクは、リターンの標準偏差σで表すことができます。

 σ2 = 0.4×(5.0%-3.0%)2 + 0.2×(3.0%-3.0%)2 + 0.4×(1.0%-3.0%)2
 σ = 1.79%

 

組み合わせたい銘柄のリスク 

次に、投資家が、次のような自動車株をポートフォリオに入れたいと考えたとします。

■自動車株のリターン

事象 確率 リターン
円高 40% -2%
横這い 20% 4%
円安 40% 8%


為替が円高になれば、輸出商品の収益が小さくなり、リターンはマイナスとなると仮定します。一方、為替が横這いの場合は、企業の成長分だけリターンが得られ、円安の場合は、輸出商品の収益アップによりリターンが大きくなると仮定します。

このときの、自動車株単体でのリターンの期待値Eとリスクσを求めます。

 E = 0.4×-2% + 0.2×4% + 0.4×8% = 3.2%
 σ2 = 0.4×(-2.0%-3.2%)2 + 0.2×(4.0%-3.2%)2 + 0.4×(8.0%-3.2%)2
 σ = 4.49%

 

ポートフォリオを作成したときのリスク
では、2.つの銘柄を組み合わせたときのリスクを見てみます。ここでは、電力株を60%、自動車株を40%の割合でもつと仮定します。

まず、円高、横這い、円安の各局面でのリターンを計算します。

円高  5%×0.6 + -2%×0.4 = 2.0%
横這い 3%×0.6 + 4%×0.4 = 3.4%
円安  1%×0.6 + 8%×0.4 = 3.8%

したがって、ポートフォリオ作成時のリターンは下の表のようになります。

■ポートフォリオ作成時のリターン

事象 確率 リターン
円高 40% 2.0%
横這い 20% 3.4%
円安 40% 3.8%


ここで、同じように期待値Eとリスクσを計算すると次のようになります。
 E = 0.4×2.0% + 0.2×3.4% + 0.4×3.8% = 3.08%
 σ2 = 0.4×(2.0%-3.0%)2 + 0.2×(3.4%-3.0%)2 + 0.4×(3.8%-3.0%)2
 σ = 0.73%

この計算から、異なる動きをする銘柄でポートフォリオを組むとリスクが軽減されるということがわかります。ここで特筆すべきなのは、リスクの低い電力株だけのときより、よりリスクの高い自動車株を組み合わせたときの方がリスクが小さくなるという点です。

 

ポートフォリオ作成時のリスク・リターンの関係
上のケースでは、電力株と自動車株を6:4の組み合わせにすることで、リスクを減らせることを説明しました。ここで、銘柄比率を変化させたとき場合にどうなるか考えてみます。

上のケースにおける、リスクと期待リターンの関係を次のようにグラフにします。

ポートフォリオ作成時のリスクとリターン

このグラフから、同じリスクでも期待リターンの異なる場合があるということがわかります。つまり、投資家は、ポートフォリオをうまく組んで、単体保有のときと同じリスクで、期待リターンを大きくすることが可能なわけです。

 

相関係数とリスク・リターンの関係
互いに連動しない、2つの銘柄でポートフォリオを組むと、最適なリスクとリターンになるような比率が存在することがわかりました。実は、このリスクとリターンは、2つの銘柄の相関係数と密接な関係があります。

 

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相関係数が-1の場合、リスクがゼロになる点が存在し、相関係数が1の場合は、2銘柄が全く同じように動くので、リスクとリターンの関係は直線で表現できます。

ポートフォリオ 相関係数

実際は、2銘柄の相関係数が-1や1になることはありませんが、2銘柄の相関によってリスクとリターンの関係がどうなるのかを把握しておくことは重要です。2銘柄の相関係数は過去の株価変動から算出することができます。

 

効率的フロンティア
上の例では、2つの銘柄でポートフォリオを組んだ場合を示しましたが、無数のポートフォリオを組んだ場合のリスクとリターンの関係は次のようになります。

効率的フロンティア エフィシェント・フロンティア

グレーの部分は、株式の組み合わせによって無数に存在するポートフォリオです。投資家は、できる限りリスクを極小化して、リターンを極大化しようとするため、結果的にグラフ上の太線のポートフォリオを選択することになります。これを効率的フロンティア(エフィシェント・フロンティア)と呼びます。

 

 

実際の株式銘柄間で相関係数を求めてみる
ポートフォリオを組んだときのリスク分散は、銘柄間の相関係数によって決まることを説明しましたが、実在する銘柄間での相関係数の求め方を解説します。(少々古い例にはなりますが、考え方の理解の妨げにはならないので、ご容赦ください)

 

過去の株価情報を拾う 

過去の株価情報はヤフーファイナンスの時系列データで確認することができます。ここでは、2003年1月~2006年12月まで1ヶ月ごとの株価情報から相関係数を求めます。(株価は、分割などの影響を排除した調整後終値を使用します。

 

  日産自動車 トヨタ自動車 日産自動車 トヨタ自動車
日付 調整後終値* 調整後終値* 前月との
終値の差
前月との
終値の差
2006年12月 1,433 7,960 21 940
2006年11月 1,412 7,020 11 90
2006年10月 1,401 6,930 78 510
2006年9月 1,323 6,420 -11 50
2006年8月 1,334 6,370 98 310
2006年7月 1,236 6,060 -14 70
2006年6月 1,250 5,990 -100 60
2006年5月 1,350 5,930 -147 -730
2006年4月 1,497 6,660 99 230
2006年3月 1,398 6,430 58 180
2006年2月 1,340 6,250 20 170
2006年1月 1,320 6,080 125 -40
2005年12月 1,195 6,120 -38 330
2005年11月 1,233 5,790 25 480
2005年10月 1,208 5,310 -88 110
2005年9月 1,296 5,200 140 700
2005年8月 1,156 4,500 -12 250
2005年7月 1,168 4,250 70 280
2005年6月 1,098 3,970 31 110
2005年5月 1,067 3,860 27 20
2005年4月 1,040 3,840 -59 -150
2005年3月 1,099 3,990 -26 -80
2005年2月 1,125 4,070 30 40
2005年1月 1,095 4,030 -19 -140
2004年12月 1,114 4,170 29 310
2004年11月 1,085 3,860 -110 -270
2004年10月 1,195 4,130 -5 -90
2004年9月 1,200 4,220 8 -100
2004年8月 1,192 4,320 -10 -160
2004年7月 1,202 4,480 -11 60
2004年6月 1,213 4,420 100 420
2004年5月 1,113 4,000 -116 10
2004年4月 1,229 3,990 64 110
2004年3月 1,165 3,880 -48 110
2004年2月 1,213 3,770 84 310
2004年1月 1,129 3,460 -95 -160
2003年12月 1,224 3,620 -28 330
2003年11月 1,252 3,290 20 160
2003年10月 1,232 3,130 27 -150
2003年9月 1,205 3,280 -48 60
2003年8月 1,253 3,220 78 170
2003年7月 1,175 3,050 27 -60
2003年6月 1,148 3,110 205 250
2003年5月 943 2,860 28 160
2003年4月 915 2,700 125 65
2003年3月 790 2,635 -97 -140
2003年2月 887 2,775 -26 -80
2003年1月 913 2,855    

 

相関係数を求める
抽出した株価情報を元に、各月の株価の変動を求めます。そして2銘柄の株価変動に対して相関係数を求めます。(エクセルを使う場合は、CORREL関数で相関係数を求められます。)

 

日産とトヨタの場合、相関係数は0.54になります。

一般的に0.7以上ないと相関があるとはいえないので、日産とトヨタの場合あまり相関があるとはいえないようです。おそらく同じ自動車メーカーでもビジネスの仕組みが異なり、外部要因に対する変動の仕方が異なるためでしょう。

 

同業種・異業種での相関係数
日産とトヨタの例では相関係数があまり高くなかったのですが、一般的に、同業種同士は株価変動の相関係数は高く、異業種同士の株価変動の相関係数は低くなることが想定できます。

同じアパレル業界のポイントとユナイテッドアローズで求めてみたところ、相関係数は0.74となり、日産とトヨタの場合に比べて相関係数が高く、絶対値で見ても相関があるといえる関係になっています。

では、トヨタとユナイテッドアローズで見るとどうなるでしょうか?計算してみると相関係数は0.34となり、かなり相関が低いことがわかりました。

円安で利益がプラスになりやすいトヨタと、逆に円高で利益がプラスになりやすいユナイテッドアローズのビジネスシステムの違いが、相関係数が低くなる一因と考えられます。