インターネットビジネスや、プラットフォーム型の事業において重要な概念となっているものにネットワーク効果があります。
この記事では、ネットワーク効果について解説していきます。
ネットワーク効果とは
ネットワーク効果とは、顧客が増えれば増えるほど、ネットワークの価値が高まり、顧客にとっての便益が増えていくことを指します。
ネットワーク内の人だけでなく、ネットワークの外部にいる第3者にとっての価値も高める意味から、ネットワーク効果のことをネットワーク外部性とも呼びます。
ネットワーク効果が働くサービスや製品では、品質や技術以上に利用者の数によって得られる便益が大きくなるので、あるサービスや製品が一旦シェアで優位になると、爆発的にユーザーが増加する傾向があります。
ネットワーク効果の好循環

ネットワーク効果2つのタイプ
ネットワーク効果には、2つのタイプがあります。
1つは、サイド内ネットワーク効果、もう1つが、サイド間ネットワーク効果です。
サイド内ネットワーク効果
ネットワーク効果は、電話のように発展する以下パターンがあります。
サイド内ネットワーク効果とは、ユーザーが属するグループ内で発揮されるネットワーク効果のことです。
単にネットワーク効果というと、このサイド内ネットワーク効果を指すことが多いです。
サイド内ネットワーク効果では、以下のようにネットワークの価値が高まっていきます。
顧客が増える ⇒ 価値が高まる ⇒ また顧客が増える ⇒・・・・
サイド間ネットワーク効果
サイド間ネットワーク効果とは、あるプラットフォームにおいて、種類の異なる参加者グループの間で働くネットワーク効果のことです。
片方の参加者グループが増加すると、もう片方の参加者グループにとって、製品やサービスの価値が向上する現象のです。
サイド間ネットワーク効果では、以下のように補完業者が間に入りながらネットワークの価値が高まっていきます。
顧客が増える ⇒ 補完業者が増える ⇒ 価値が高まる ⇒ また顧客が増える ⇒・・・・
一般的には、サイド内ネットワーク効果が働き、その後にサイド間ネットワーク効果が発揮されていきます。
なお、以下の記事では、ネットワーク効果のパターンを13分類に分けて解説しています。
https://hiromaeda.com/2018/02/04/network_effects/
ネットワーク効果の代表例
過去ネットワーク効果が発揮されてきた代表的なものに電話があります。
電話のネットワーク効果
電話は加入者が少数の場合、あまり使うメリットがありませんが、加入者が増えれば増えるほどその価値は高まります。
そして最後には、そのネットワークに加入していないこと自体が不利益を被るような状態になりました。
昔は固定電話がネットワーク効果を発揮した代表例でしたが、90年代後半から携帯電話全盛になると携帯電話がネットワーク効果を発揮しました。
これは、離れた人と話ができるという便益に加えて、いつでもどこでも話ができるという便益が、万人にとって無くてはならない価値になったことで生じた変化です。
携帯電話でサイド内ネットワーク効果が発揮されたことにより、携帯電話端末を提供する端末メーカーにもとっても端末開発の価値が急速に高まり、やがてスマートフォンの時代になるとアプリの開発の価値が高まりました。
このようにサイド内ネットワーク効果が発揮された後に、端末会社やアプリ開発会社に対するサイド間ネットワーク効果が発揮されるようになったのです。
電話以外のネットワーク効果
電話以外にネットワーク効果が働くものとしては以下の例があります。
- クレジットカード決済
- SNSサービス(Facebookやツイッターなど)
- オークションサイト
- ECサイト
- 動画サイト(Youtubeなど)
- 電子マネー決済
- パソコンのOS(Windowsなど)
クレジットカード決済は、電話と並んで比較的古くからネットワーク効果を発揮してきたものです。
その他のサービスは、インターネットの発展とともに発達してきたサービスで、ネットワーク効果の重要性が顕著になってきています。
SNSは、ユーザーのコミュニケーションツールとしてユーザーの中でサイド内ネットワーク効果が発揮されたのちに、広告事業者や法人企業などのSNS参入が促されるなど、サイド間ネットワーク効果も発揮された例です。
動画サイトも同様の変遷を遂げてきました。
一方で、WindowsのようなパソコンのOSは、サポートするソフトウェアメーカーを補完業者として巻き込みながら成長しているという点では、初期の段階からサイド間ネットワーク効果が働かせながら成長してきた例になります。
ネットワーク効果の数値的考察
ネットワーク効果の価値を数値的に表す例として、そのネットワーク内の情報ラインの数があります。
ネットワーク内のN人の情報ラインの組み合わせ数は次のとおり表すことができます。
組み合わせの数 = N × (N-1)
つまり、ネットワーク効果のあるサービスにおいては、そのネットワークに参加する人間の数が増えると、その二乗に比例して価値が高まっていくのです。
たとえば、5人のネットワークで、それぞれが1対1で情報をやりとりする場合、そのラインの数は以下のようになります。
5 × (5-1) = 20通り
ところが、ネットワーク内の人数が500人なると、
500 × (500-1) = 249,500通り
となり、5人の場合に比べると、人数は100倍なのに、価値は12,475倍にまで膨れ上がることがわかります。
ネットワーク効果が効く事業では初期投資が大事
商売を拡大していく中で、ネットワーク効果が働くかどうかは重要なポイントになります。
もしネットワーク効果が働くビジネスだとすると、業績が赤字であっても、ひるむことなく投資を続けて、ネットワーク効果を発揮できるようにサービス加入者を増やす必要があるからです。
近年では、バーコード決済のPayPayが大型キャンペーンを仕掛けるなど、電子マネー決済の覇権争いが盛んですが、ネットワーク効果が発揮できるがゆえに各社とも覇権争いのために巨額の投資をしているのです。
まとめ
以上、ネットワーク効果の解説でした。
- ネットワーク効果とは、サービスへの加入者が増えれば増えるほど、急速に価値が高まる状態のことを指す。
- ネットワーク効果には、サイド内ネットワーク効果と、サイド間ネットワーク効果があり、一般的にサイド内ネットワーク効果が発揮された後に、サイド間ネットワーク効果が発揮される。
- ネットワーク効果の代表例として電話、クレジットカード、インターネット系のサービスの他、パソコンのOSなどがある。
- ネットワーク効果が働くネットワークにおいて、ネットワークの価値は、ネットワーク内の人数の2乗に比例して高まっていく。
- ネットワーク効果が働く事業においては、初期投資を大きく使ってネットワーク内の人数を増やすことが重要になってくる。