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【5分でわかる】WACCとは CAPMとは 割引率・資本コスト・計算方法

割引率とはDCF法を用いる上で必要不可欠な数字で、将来の現金を現在の価値に割引く際に使う係数です。

これは言い換えると投資に対する期待収益率と等価になるものですが、期待収益率の高さはイコール「リスク」の大きさととらえることができます。なぜなら、投資家はリスクの高いものほど大きな見返りを要求するからです。

 

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この記事では、DCF法における割引率として活用されるWACCについて解説していきます。WACCを知ることで、DCF法の概念をより深く理解できるようになります。

 

割引率(WACC)の計算式

企業価値の計算に用いる割引率には通常、加重平均資本コストと呼ばれるWACC(ワック)を用います。WACCは、株主資本コストと負債資本コストを加重平均して求めます。(つまり自己資本と他人資本の調達コストを加重平均していることになります。)

計算式は以下のとおりです。

WACC 

= [rE × E/(D+E) ] + [rD×(1-T) × D/(D+E)]

 

rE = 株主資本コスト
rD = 負債コスト
D =有利子負債の額(時価)
E =株主資本の額(時価)
T =実効税率

 

ファイナンス理論では、全て時価で考えるのが基本です。しかし、有利子負債のように時価と財務諸表上の簿価とで大きな差がない場合は簿価を使う場合もあります。

 

WACCの意味

WACCは、企業が達成すべき投資利回りの基準になる数値です。企業買収や企業評価する際、あるいは、企業内の投資案件の評価をする際に用いられます。

企業が事業を運営していく上で必要な資金には負債と資本があり、それぞれ調達のためには金利や配当金など、調達のためのコストが必要となります。

WACCは、資本にかかるコストと、負債にかかるコストの加重平均する考え方で、その会社の総合的な資金調達コストを示します。

WACCの概念

資金調達コストは、その会社がビジネスから得るべき最低利回りと同じになります。なぜなら、会社は資金調達コストを上回る利回りをビジネスから得ることができなければ、その存在意義がないからです。

 

負債にかかるコスト

負債のコストとは、借入金に対する利息になります。借入による資金調達には、何%かの利息をコストとして払う必要があります。

負債コストは、次の式から求める事ができます。

負債コストrD = 負債に対する金利

= 支払利息 / [(期首有利子負債 + 期末有利子負債) / 2 ]

 

本来は、その会社が現時点で有利子負債をいくらの金利が借り入れできるかで考えるべきなのですが、外部からだと銀行が金利をいくらに設定するかなど細かいことはわかりません。そこで、財務諸表から簡単に判別できる実際の支払利息と、期首・期末の有利子負債から計算します。

 

負債には節税効果があるので、負債コストは実効税率の分だけ割引かれます。これがWACCの計算で出てくる rD × (1-T) を表しています。

 

実効税率とは

実効税率とは、法人税や事業税、住民税などの税率に基づいて計算された総合的な税率のことです。実効税率は、税効果会計や中期経営計画等で法人税等を想定する際に用いることが一般的で、実際の納税計算で使われることはありません。

実効税率は次の計算式によって表されます。

 

法定実効税率

= 〔法人税率×(1+住民税率)+事業税率〕÷(1+事業税率)

 

実効税率は国によって決まっていて、低い方が利益(厳密には課税所得)に対する税率が低い、すなわち最終利益が大きくなり、逆に高い方が最終利益が大きくなります。

世界の法人税率(法定実効税率) 国別ランキング・推移

 

なお、上記ページにはないアジア各国ですが、一般的には中国は25%、マレーシア・インドネシアも25%、シンガポールは17%、タイは20%となっております。(産業によって軽減税率が適用されるなどありますので、あくまで一般的な税率です。)

 

株主資本にかかるコスト

資本の調達先は主に株主です。株主は企業に資金を投資することによって、他の投資機会(他の企業の株式や外為など)を奪われるうえ、元本割れのリスクを背負うことになります。

したがって、株主は企業への投資に対してリスクフリーの利回り以上の利回りを求めます。逆に株主の期待する利回りを上回ることができなければ、株主は資金を投資してくれないでしょう。株主が期待する利回りは、次のCAPMと呼ばれるモデルで算出することができます。

 

CAPMで株主資本コストを算出

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株主資本コストは一般的にCAPM(Capital Asset Pricing Model 資本資産価格モデル)と呼ばれる理論に基づいて算出されます。(CAPMはキャップエムと読みます)

 

CAPMとは、株主が企業に期待する利回りのことで、理論上では企業はCAPM相当の利回りを株主に対して実現できなければ、株主資本は他の投資機会に奪われることになります。CAPMでは株主資本コストを次のように求めます。

 

株主資本コストrE

=リスクフリーレート+β×リスクプレミアム

=リスクフリーレート+
β×(市場全体の投資利回り - リスクフリーレート)

 

リスクフリーレート
=10年国債の利回り

リスクプレミアム
=市場全体の投資利回り-リスクフリーレート(あるいは過去の収益率)

β(ベータ)
=個別株式の変動/株式市場全体の変動 (企業ごとに値が異なります)

 

リスクフリーレートとは

リスクフリーレートとは、リスクの無い(元本の保証された)投資商品における利回りのことをいいます。

リスクフリーレートには、銀行預金や郵便貯金の利回りなどがありますが、一般的によく用いられるのが、10年ものの日本国債の利回りになります。

(厳密に言うと国債はリスクフリーではありませんが、日本の場合はほぼリスクフリーと考えて差し支えないと思います。ただし、発展途上国などは経済が不安定なため、国債をリスクフリーと考えることができない場合があります。最近では、2002年にアルゼンチンが国債のデフォルトをしています。)

リスクフリーレートは、何かに投資をする際の意思決定に用いられます。例えば、割とリスクの高い投資対象の利回りがリスクフリーレートより低かったら、始めから預金をしておいたほがマシという結論になります。では、リスクフリーレートを上回りさえすればよいかというと、そういうわけでもありません。

リスクの高い投資対象の期待利回りには、リスクフリーレートの他にリスクプレミアムを上乗せします。これによりリスクに見合うだけの利回りを算出し、投資対象がそれを上回るどうかで投資の意思決定をしていきます。

一般的に、リスクフリーレートとリスクプレミアムを加えたものを割引率として現在価値の算出を行います。

 

リスクプレミアムとは

リスクプレミアムとは、投資をする際に資金を同じようなリスクにさらした場合の期待利回りとリスクフリーレートとの差をいいます。

元本を危険にさらすような投資の場合、期待利回りがリスクフリーレートより高くなるのは当然ですが、それをどの程度見ておけばよいか判断するときにリスクプレミアムを用います。

例えば、リスクフリーレートが1.5%で、同じようなリスクの投資対象が5%の利回りの場合、リスクプレミアムは次のようになります。

(5%-1.5%)=3.5%

会社における投資判断では、無リスクということはまずあり得ないので、リスクプレミアムを考慮する必要があります。

リスクフリーレートとリスクプレミアムを用いた期待利回りとしてよく用いられのがWACCです。

βベータとは

βとは市場全体の動きに対する個別株式の動きを表す係数です。

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例として、ある企業のある期間における株価上昇率が5%で市場全体の上昇率が4%だった場合、株主資本コストは次のようになります。

rE=1.44%+(5%/4%)×(4%-1.44%)=4.64%

WACCの計算例

以下のような条件でWACCを計算してみます。

■長期国債利回り 1.44%

■リスクプレミアム 4.5%

■ベータ 1(銘柄の値動きと市場の値動きは完全に連動していると仮定)

■有利子負債の額 5,755百万円

■時価総額 81,010百万円

■実効税率 40.0%

■負債に対する利息 125百万円

株主資本コストrE = 1.44% + 1.0 × 4.5% = 5.94%

負債コストrD=125/5755 = 2.17%

負債比率=5,755 / (81,010+5755) = 6.63%

資本比率=5,755 / (1,781,010+5755) = 93.37%

ここからWACCを計算すると

WACC= 5.94% * 93.37% + 2.17% * 6.63% = 5.69%

 

WACCの限界

しかし、WACCにはいくつか欠点があることも事実です。ここでは、WACCを用いる際に留意しておかなければならないWACCの限界について解説します。

WACCの限界1(時制の不一致)

企業の資本に対するコストはWACCで求められるとしました。WACCは理論としてほぼ完璧で、今のところ資本コストの算出でWACCに変わるモデルはありません。

しかし、そのWACCにも限界がひとつあります。それはCAPM算出の際に用いるβ(マーケットリスクとの連動性)とリスクプレミアムです。WACCは、企業が将来創出するキャッシュに対する割引率として用いられます。ということは、すべての要素は企業の未来の状況に基づいて考えなければなりません。

ところが、βとリスクプレミアムについては過去のデータを参照にして求めていて、時制の不一致が起こっています。これは将来のβとリスクプレミアムを理論的に算出することが不可能だからです。これがWACC(CAPM理論)の限界といわれています。

 

WACCの限界2(資本構成の変化が反映できない)

WACCのもうひとつの限界は、資本構成によって負債コストと株主資本コストを加重平均しているという点です。つまり、WACCによる割引率は、資本構成(負債と株主資本(時価)の割合)が将来にわたって一定であることを前提としているわけです。逆に、将来の資本構成が変われば将来のWACCも変えなければいけないわけです。

しかし、株主資本の時価(つまり株価)が将来にわたって不明確である以上、一定という前提を立てることや将来のWACCを求めることはほぼ不可能に近いわけです。

したがって、DCF法でWACCを割引率に用いる場合、将来にわたって資本構成が安定していてWACCの変動が少ないと想定される場合に用いることができます。(資本構成が安定しない場合のキャッシュフローの求め方としてAPV法というものがあります)

WACCの限界

APV法に関する記事はこちら

【5分でわかる】APV法とは 資本構成影響を反映できる企業価値算出方法以下のWACCの記事でも解説したように、WACCは資本構成が安定していることを前提とした指標になります。したがって、キャッシュフローの予...

 

WACCに関しての質問

YAHOO知恵袋にあったWACCに関する質問の中に私が答えたものがあるので、そのリンクをこちらに貼っておきます。(なお、回答のリンク先は古いリンク切れのページになっていますこと、ご了承ください)

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13199635938

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12200373537

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14199552399

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10200077945

 

まとめ

以上、WACCの解説でした。

  • WACCはDCF法の割引率として最もよく使われるもの
  • WACCは資本コストと負債コストの加重平均により算出される
  • 資本コストにはCAPM理論が使われる
  • WACCにも限界があり万能ではないので、欠点を踏まえて活用する必要がある

 

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