経営戦略の基礎を学ぶ

【徹底解説】バリューチェーン分析とは 意味・使い方・事例 スマイルカーブ・再構築例まで

会社の存在価値は、顧客に価値あるものを提供できているかどうかによって決まってきます。その会社が、どのような価値を生み出しているのかをビジネスプロセスから分析する手法としてバリューチェーン分析があります。

バリューチェーン分析をすることで、会社がどのような活動によって価値を生み出せているのかという貴重な示唆を得ることができます。

この記事では、バリューチェーン分析について詳細解説していきます。

バリューチェーン(価値連鎖)分析とは

バリューチェーンとは、原材料の段階から最終顧客で消費される段階において、各段階における付加価値(value)の流れのことです。

バリューチェーンは、自社の事業活動の中で、競争優位性の構築に寄与しているのはどの部分か(価値の源泉はどこか)を分析するためのフレームワークです。バリューチェーンは、業界のKSF(Key Success Factor:重要成功要因)を発見するときに有効なフレームワークです。

【3分でわかる】KSFの例 KSF:Key Success Factor 事業の重要成功要因 事業の資源配分を考えるときに、事業の成功のために必須となる成功要因、KSFを特定することが重要な要素のひとつとなります。 ...

 

下図は、バリューチェーンのイメージ図です。

バリューチェーン分析

上は、あくまで一例で、業種によってバリューチェーンに出てくる活動内容は変わってきます。また、バリューチェーン分析は主たる活動を漏れなく網羅できていればよいので、分割の仕方に厳密な決まりはありません。(例えば、営業の中にマーケティングの要素があっても、企画の中にマーケティングの要素があってもOK。あるいはマーケティングを独立した活動と捉えてもOKです。)

バリューチェーン分析のメリット

バリューチェーン分析をすることで、次のようなことがわかります。

  • 会社の事業活動プロセス
  • プロセスの中で相対的に重要な役割を占めている機能
  • プロセスの中で競争優位のある機能
  • プロセスの中で競争優位の少ない機能
  • 上記のことから、事業活動の中で今後強化すべき領域

 

バリューチェーンの事例

バリューチェーンは業界によってその形が大きく異なります。ここでは代表的な例を4つの業界、製造業、建設業、サービス業、銀行からあげてみました。

<製造業>

バリューチェーン

<建設業>

<サービス業>

バリューチェーン

<銀行>

<病院>

バリューチェーンの事業連鎖分析への応用

バリューチェーンは、自社だけでなく、「原材料メーカー ⇒ 製造メーカー ⇒ 流通業者 ⇒ 販売業者 ⇒ 顧客」というように、業界の川上から川下まで含めた見方をする際にも活用できます。(これを一般的に事業連鎖と言います。また、バリューチェーンを生みの親、マイケル・ポーターは、これをバリューシステムと呼んでいます)

自社以外も含めたバリューチェーン(事業連鎖・バリューシステム)

<事業連鎖から企業の主活動までの全体像>

バリューチェーン分析の使い方

1.主なステップ・プロセスを特定する
バリューチェーン分析をするには、まずそのビジネスの鍵となるステップを特定します。細かい活動まで書くとキリがないので、ビジネスのフローを大まかにとらえられる切り方をします。

2.最も重要な要素をさらに分解する
キーステップの中で、さらに重要な要素を分解していきます。重要な要素とは、差別化要素の大きいステップや、その活動にかかるコストが大きい要素のことをいいます。

3.各機能にかかっているコストを分析する

各機能にかかるコストをできる限り正確に把握します。次に解説する強み、弱みやKSFとの整合を考える際に、本来かけるべきところに費用をかけられているか、本来かけなくてもよいところを最小限にできているかなど分析しておく必要があります。

4.自社と競合でそれぞれの強みと弱みを分析する
要素をある程度切り分けて、そこにかかるコストを把握することができたら、それぞれの要素で自社と競合でどのような違いがあるのか?それは業界のKSFと合致したものか?などを分析します。

こうしたバリューチェーンのどこに大きな付加価値をつけるかによって、企業のコスト構造は大きく変わってきます。例えば、同じ書籍販売業でもアマゾンのようなネット書店とジュンク堂のような店舗型の書店ではバリューチェーンの構造が異なり、結果コスト構造も大きく異なってきます。

バリューチェーンを他のビジネスフレームワークと組み合わせて活用することもあります。詳細は環境分析のプロセスを参照ください。

【解説】事業環境分析のプロセス 活用できるフレームワークの紹介企業の戦略を立案する上で、企業のおかれている環境を分析することは大変重要です。しかし、「事業環境ってどうやって分析していけばよいの?」と...

 

また、バリューシステムの分析方法としては、以下のようなものもあります。各レイヤーにおけるプレーヤーの数と利益率を分析し、構造的に儲かる業界なのかどうかを確認するとともに、ここから各レイヤーがどのように動こうとしているかを分析することで自社業界のレイヤーで起こることを予想することもできます。

バリューシステム

 

バリューチェーン分析と経営資源配分

先ほども書いたように、バリューチェーン分析をすることで、事業活動の中で今後強化すべき領域が明確になります。

例えば、バリューチェーン分析の結果を以下のように「事業活動における付加価値の大小」と、「相対的な優位性」を軸にして仕訳ける方法があります。

バリューチェーン分析における各機能の仕訳例

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このようにマトリックスに整理すると、各事業活動の中で、自社の内部資源をどのように集中させて、どのように外部資源を獲得・活用するかが一目瞭然になります。

こうした議論に発展できるのが、バリューチェーン分析のメリットです。

資源配分を考えるに有効なスマイルカーブとは

電子業界ではスマイルカーブという曲線を用いて、資源の最適配分を考える方法もあります。スマイルカーブとは、電子産業や産業機器分野における付加価値構造を表す曲線のことで、バリューチェーン上の付加価値の高低を一目で表したグラフです。

バリューチェーンの真ん中に位置する製造と組立の付加価値が最も小さく、両端の研究・開発と販売・アフターが最も大きくなり、その曲線が放物線状に広がることからスマイルカーブと名付けられています。

スマイルカーブの例

スマイルカーブ

製造・組立

製造・組立は、技術の進歩に伴い、先進国以外でも可能になってきているため、大きな付加価値がとりにくくなっています。また、PCのように部品のモジュール化、標準化が進むと、組立自体に大した技術が必要なくなるので、高度な技術が必要なくなります。そうなると、東南アジアなどの低賃金エリアで生産できるようになり、コスト競争になっていきます。

研究・開発、ブランド

研究・開発やブランドといったコンセプチュアルな部分と、流通、販売、アフターサービスは、グローバル化が難しい部分であるため、そこを担うプレーヤーには大きな付加価値が入るという構造になるというわけです。

例えば、顧客の要望が多様化している中で、研究、開発といった部分は、その商品をヒットさせるかどうかを決定づける要素を持っています。

流通チャネル

流通チャネルは構築に時間がかかるという意味で付加価値の高い部分になりますし、販売チャネルの説明なしでは買えないような商品については、その部分がさらに大きな付加価値になります。AMAZONは圧倒的な流通チャネルを確保することで大きな利益を挙げています。

販売・アフター

販売・アフターについても多くの商材で個別対応が必要になるため、付加価値の高い部分です。特に供給者と顧客の間の情報格差が大きい場合、そこには大きな付加価値の発生する余地があります。また、顧客にとって購買頻度の低いもの(例えば、家、車、結婚式など)は、原価構成を把握する術がなく高い利益率にしても顧客が購入しれくれる構造を作りやすくなります。(もちろん競争状態によって変わりますが)

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電子業界における資源配分の例

電子業界においては、Appleのように製造を持たずに付加価値の高い研究開発、デザインに特化して高い利益率を実現している例があります。

しかし、スマイルカーブに限らず、バリューチェーン分析でも言えることですが、必ずしも付加価値高い=やる、付加価値低い=やらない、とはなりません。一般的な付加価値構造を理解した上で、事業戦略としてはあえて付加価値の低いところを攻めるという意思決定もあり得ます。

実際、アジアのEMS(電子部品の受託生産)のように、スマイルカーブの示唆とは逆張りをして、本来は付加価値が低いはずの電子部品の製造・組立の部分に巨大投資をするというケースがあります。

バリューチェーンの再構築・デコンストラクション

先ほど業界の川上から川下までを考える事業連鎖にも言及しました。この事業連鎖の構造は、人件費の高騰や技術の進化によって再構築が必要になってきます。その再構築のことをデコンストラクションと言います。業界の変化を捉えて積極的に競争優位を築くためにデコンストラクションを行います。

デコンストラクションをする際のチェックリスト

まず、デコンストラクションを実施する際の機会や脅威を見つけるためのチェックリストとして、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)では、以下の5つをあげています。

  1. バリューチェーン全体の中で、コストの割に価値の低いところはどこか(人件費が該当する場合は、流通における中抜きなど考えられる)
  2. 自社の事業は、顧客のバリューチェーンの一部か、全部か
  3. 自社の事業で、ネットワークによって影響を受けるのはどこか
  4. 現在の戦略的資産のうち、負債となるものはどれか(バリューチェーンを再構築することで不要になる資産)
  5. どのような新しい活動・能力が必要になるか

 

デコンストラクションの例

■従来のバリューチェーン

バリューチェーン

■レイヤーマスター
レイヤーマスターとは、ある特定の付加価値活動に集中して、競争優位性を築くプレーヤーのことです。インテルやマイクロソフト、自転車部品のシマノ、ヒロセ電機のコネクタなどがレイヤーマスターの代表的存在です。

レイヤーマスター

■オーケストレーター
オーケストレーターとは、コアとなる付加価値活動に注力して、他をアウトソーシングすることにより全体の価値を高めるプレーヤーのことです。パソコンダイレクト販売のデルはオーケストレーターの代表的な存在です。

オーケストレーター

■マーケット・メーカー
マーケットメーカーとは、既存チャネルの弱いところを乗っ取って市場を作るプレーヤーのことです。メーカー系列店の弱みをついて成長した家電ディスカウンターや、実店舗と顧客を仲介するネット販売業は、マーケットメーカーの代表例です。

マーケット・メーカー

■パーソナル・エージェント
パーソナルエージェントとは、顧客の購買代理店となって情報ナビゲーターになることです。刊行されているあらゆる書籍を検索でき、配達日が明確で、読者のフィードバックがわかるアマゾンは、パーソナルエージェントの代表例です。

パーソナル・エージェント

 

デコンストラクションが起きる業界

BCGは、デコンストラクションの起きる業界の条件として以下の5つをあげています。

  • 既に強固なビジネスモデルが存在する業界
  • 規制業界
  • ローカルな地域で事業展開している業界
  • 技術革新の可能性の高い業界
  • 非効率な業務を抱えている業界

 

まとめ

ここまで解説してきたように、バリューチェーン分析をすることで、自社、競合のビジネスプロセスのどこに強みがあり、価値の源泉になっているのか、どこに資源を集中させるべきかを明らかにすることができます。

さらにそれを業界全体のバリューシステムとして分析することで、業界の中で誰がどのような役割を担っているのか、誰がキープレイヤーなのかを明確にするとともに、そのバリューシステムが過去から未来に渡って、どのように変化し、再構築されているのかを図示することも可能です。

この分析は、全ての産業において活用可能なので、みなさんも是非ご自身の会社、業界に適用してみてください。

 

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