大企業を辞めたいのだけど、メリット・デメリットは?
今回は、こんな疑問を持つ方のために記事を書いていきます。
私は、大企業勤務から転職を経て独立、大企業から中小企業までさまざまな会社にコンサルティングサービスを展開してきました。
また、個人的にいくつかのスタートアップ企業とも付き合いがあります。
そうした経験から、大企業のメリット・デメリットと、他の選択肢のメリット・デメリットをまとめてみました。
この記事が、自分のキャリアを向き合う上での参考になれば幸いです。
大企業勤務のメリット・デメリット
大企業のメリット・デメリットとして、以下のものが挙げられます。
- 社名で仕事ができる
- 大きなお金を動かせる
- 大人数を動かす経験ができる
- 利害調整能力が身につく
- 組織が動く論理がわかる
- 異動でさまざまな職種を経験できる
- 良くも悪くも教師になる先輩がいる
- 福利厚生が充実している
- 海外出張・赴任時のサポートを万全にしてくれる
- 失敗に対する許容度が高い
改めて、見てみると本当に多くのメリットがあったと思いますし、この中のいくつかは、独立した後でも生きている経験です。
一方で、以下のようなデメリットがあります。
- 仕事のスピードが遅い
- 若いうちはプロジェクトの一部しか担当できない
- 仕事がマンネリ化しやすい
- ぬるま湯の中でリスクを忘れてしまう
実際に、若いうちは大きな仕事の一部しか任せてもらえないですし、年齢を重ねて出世の限界が見えてくると、新鮮味がなくなってしまいます。
また、早期退職がたびたびニュースになるものの、危機感が薄い人が多く、ぬるま湯体質に見えるところも多いです。
関連記事:勤務15年の経験者が感じる【大企業のメリット・デメリット】
大企業を辞めるときの3つの選択肢
大企業を辞めた場合、その後の選択肢は大きく3つあります。
- 中小企業に転職する
- ベンチャー企業に転職する
- 起業をする
それぞれ詳細を解説していきます。
中小企業に転職する
中小企業といっても、そのサイズはピンからキリまでありますが、年商50億円未満、社員数200人以下くらいの規模で考えます。
その場合、次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット1:裁量の範囲が広くなる
中小企業だと、会社の業務に対して、1人あたりの占める割合が大きくなるので、必然的に業務の裁量範囲が広がります。
これはデメリットと裏表でもありますが、1人が顧客対応、オペレーション、事務処理を一手に引き受けてやる必要があるので、覚えられる業務量は多くなります。
メリット2:アットホームな雰囲気
大企業でも、部署によってアットホームな雰囲気のところはありますが、中小企業の方がアットホームな感じの会社は多いです。
良くも悪くも社内一丸となって何かをやる雰囲気があります。
メリット3:早期に幹部になれる可能性がある
200人くらいの規模であれば、基本的に社長が全員の顔と名前が一致するレベルなので、その中で目立った活躍をすると、すぐに幹部に引き上げられる可能性があります。
実際、私がお付き合いしている20人~200人レベルの中小企業だと、総じて幹部レベルの人達の年齢は大企業に比べて若いです。
デメリット1:教育やインフラが脆弱
大企業のような充実した研修制度はまず期待できません。
中小企業には、すぐに仕事(お金)に直結しないことにお金を出せる余裕がないところが多いからです。
基本的には、仕事の中で覚えていくか、空いた時間を勉強にあてるなどして、自立的に勉強する姿勢が求められます。
デメリット2:社長や社員との相性が大きなウェイトを占める
社長や社員との相性が仕事の大きなウェイトを占めます。
一旦、関係が悪くなってしまうと、大企業のように異動させてくださいというわけにはいかないです。
また、中小企業によっては、社長が創業者でかなりワンマン経営な会社もあるので、社長の意に沿わない人になってしまうと、非常に仕事がやりづらくなります。
仮によい成績を収めていても、社長の意に沿わないことが退職に追い込まれるみたいなこともあります。
逆に言うと、社長や社員と良好な関係を築けると、とても居心地のよい環境になるでしょう。
デメリット3:給料は大企業より安い
給料は多くの場合、大企業より安くなります。
大企業はITや機械設備に投資をして、仕組み化できる力があるので、その分だけ生産性が高くなる(=1人あたりの給与の分け前が増える)からです。
ベンチャー企業に転職する
もう1つの転職のパターンが、ベンチャー企業への転職です。
ベンチャー企業と中小企業との違いは、急成長を目指して事業をやっているかどうかです。
挙げられるメリット・デメリットは、基本的に中小企業に近いですが、ベンチャー企業ならではの点として、以下のメリット・デメリットがあります。
メリット1:成長を実感できる
業績が安定した中小企業だと、大企業よりもぬるま湯体質の会社も多いですが、ベンチャー企業の場合は、投資家からのプレッシャーもあって成長させることが使命になっているので、会社全体が大きな成長を目指しています。
その中で、仕事をすると必然的に自分自身の成長実感にもつながります。
メリット2:ストックオプションをもらえる可能性がある
ストックオプションとは、株式を指定された価格で買う権利のことですが、創業から間もない会社ほど給与が安い分、その分の補填としてストックオプションを貰えるケースがあります。
もし、会社が成長を続けて上場するとなれば、そのストックオプションが何千万円になる可能性もあります。
ただし、これは極めてレアなケースなので、過度な期待は禁物です。
デメリット1:激務になる可能性が高い
会社が成長期にあると、やることが無限大に思えるくらい多くなります。
たとえば、ベンチャー企業の場合、大企業のようにじっくり検証して製品やサービスをリリースすることはできず、リリースして顧客を増やしながら改善を重ねることも多いので、仕事は膨大になりがちです。
また、成長に伴って人が増えたり、顧客が増えたりすると、それだけでもトラブルが発生する元になります。
そうしたトラブルが起きたときに、基本的には担当者が全て後始末をしなければなりません。
デメリット2:誰もサポートしてくれない
人が少ないので、誰かがサポートしてくれる余裕はほとんどありません。
成長期にあるベンチャー企業だと、経営者も含めてまわりも相当忙しいので、わからないことがあっても自発的に考え、調べ、行動して解決を図っていく覚悟が必要になります。
起業をする
転職をせずに起業をすることも1つの選択肢です。
メリット1:裁量が最も大きい
起業は圧倒的に裁量が大きいです。
1人で起業すれば、いつどこで何をしていようが文句を言われることもありません。
メリット2:稼ぎのポテンシャルも大きい
稼ぎのポテンシャルも大きいです。
製品やサービスが順調に行けば、大企業勤務時代の年収を大きく超えることも可能です。
どのような業種で起業するかにもよって儲かり方は変わりますが、粗利が高く、仕組み化して回せる事業を作れれば、1人で億を稼げるポテンシャルもあります。
また、稼ぎという点とは、少し異なるかもしれませんが、会社を持つことで節税することもできるので、サラリーマン時代と同じ稼ぎであっても、実質的な可処分所得を増やすことも可能です。
デメリット1:リスクと責任を全て引き受ける必要がある
裁量と稼ぎのポテンシャルが大きい代わりに、リスクと責任を全て引き受ける必要があります。
起業して数年のうちは、社員を増やすことも難しいでしょうから、仕事上のトラブルや、顧客対応などが起きても、全て自分で責任を持って対応しなければなりません。
仕事上の失敗があっても、誰にも愚痴は言えないですし、誰のせいにもできません。
失敗と向き合って、対応方法を考えて突破する。
これを黙々とやっていく必要があります。
デメリット2:社会的・経済的に安定しない
サラリーマンに比べて社会的な安定度は低いです。
たとえば、大企業のサラリーマンなら、簡単に住宅ローンを組めますが、起業をするとかなり難易度が上がります。
独立は、経済的にも安定しません。
サラリーマンであれば、毎年給料が入ってきますが、独立すると自分が仕事を取ってこれなければ収入はゼロです。
仮に、顧客が3社いて収入があっても、来月この3社との契約が切れたら、再来月からの収入はゼロになります。
本当は何から辞めたいと思っているのか
さて、ここまで大企業を辞める選択肢について書いてきましたが、ここで一歩踏みとどまって考えて欲しいことがあります。
それは、「大企業を辞めたい」と思う感情が、本当は「何から」辞めたいと思っているのか?ということです。
本当に「大企業」を辞めたいと思っているのか、「今の会社」を辞めたいと思っているのか、あるいは単に「今の環境」を変えたいと思っているのか、で全く解決の方向性が変わってくるからです。
もし、大企業を辞めたいと思っているなら、ここまで解説した選択肢は有効ですが、そうでなければ、他の選択肢もあります。
別の大企業に転職する
たとえば、「今の会社」を辞めたいと思っているのであれば、同じ大企業に転職するのも1つの手段です。
冒頭に書いたように大企業には数多くのメリットがあります。
私も大企業勤務を15年続けてきて、今独立して中小企業ともお付き合いをしていますが、社内の環境は圧倒的に大企業の方が恵まれています。
大企業を辞めて中小企業やベンチャー企業に転職すると、大企業に戻る難易度は高くなります。(もちろん、可能性ゼロではありません)
もし、真の要望が「今の会社」への不満であるなら、別の大企業に転職する方法を模索することをおすすめします。
同じ会社で別の部署に異動する
一方で、単に「今の環境」を変えたいと思っているだけなら、同じ会社で別の部署に異動することも選択肢になります。
大企業だと、部署が変われば全く雰囲気も異ります。
たとえば本社スタッフの経理やマーケティングと、前線の営業では全く異なる風土であることもよくあります。
転職のときに、未経験職種に変わるのは難易度が高いですが、社内異動なら未経験職種への挑戦も可能です。
異動願いは簡単には通らないかもしれませんが、真剣に上司や、上司の上司などにお願いをすれば、優先して検討の遡上に挙げてもらえるケースもあります。(人の異動要望の話は、管理職同士ですぐに情報として出回るので)
もし、真の要望が「今の環境」を変えることなら、無理して辞める必要もないでしょう。
ただし、全く何の準備もなく異動させてもらうのは、大変かもしれないので、スキルを事前に習得する姿勢は大事かもしれません。
考えを整理するには人への相談が有効
ここまで、さまざまな視点で選択肢を書いてきましたが、自分が本当にどうしたいのか?を1人で悩んでいてもなかなか解決にはつながりません。
そんなときに相談相手になれるのが、キャリアコンサルタント(転職エージェント)です。
実際に、転職エージェントと会話をして、いくつか求人案件を紹介してもらうと、次のようなことが起きます。
- 今の会社の良い部分と悪い部分を客観的に認識できる
- 自分が本当にやりたい思えることが整理できる
転職エージェントに会うのは、面倒だな。。。
こんなふうに思ってしまがちですが、今の会社に何らかの不満があるのなら、その不満を種を明確しておくことは重要です。
明確しないまま放置しておくと、いつまで経っても、何となく「辞めたいな」と思ったままズルズルと貴重な時間を使ってしまうからです。
時間を多少とられてしまうデメリットはあるものの、選択肢を広げられる可能性を考えれば、ものすごく小さな投資ですし、何より金銭的な負担が一切ありません。
最近では、オンライン面談も増えているので、スキマ時間を活用しやすくなっています。
今すぐ転職する意思はなくても、エージェントは親身に相談に乗ってくれますよ。
関連記事:【情報収集だけでも可】転職サイト・エージェントに登録する3つのメリット
まとめ
以上、大企業を辞めるメリット・デメリットを経験談から書いてみました。
- 大企業には社員をサポートする体制が充実しているメリットがある一方で、裁量の範囲が狭く、仕事がマンネリ化しやすいデメリットがある。
- 大企業を辞めた後の選択肢は大きく、中小企業に転職する、ベンチャー企業に転職する、起業するの3つがある。
- 中小企業は、裁量範囲が広くなるが、給与は安くなる傾向にあり、よくも悪くも社長や社員との相性に左右される。
- ベンチャー企業は、成長実感を持てたり、大きく成長すると収入が増える可能性があるが、一般的にはサポートが少なく激務になりがち。
- 起業は裁量が大きく、稼ぎのポテンシャルも大きいが、リスクと責任を全て1人で引き受ける覚悟が必要で、社会的にも経済的にも不安定になる。
- 大企業を辞めたいという感情が、本当は「何から」辞めたいのかはっきりさせることが重要。今の会社から辞めたいなら大企業への転職も1つの選択肢になる。今の環境を変えたいだけなら、部署異動もあり得る。
- 1人で悩んでも、結論が出ないなら転職エージェントに相談することで、考えが整理される。