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【5分でわかる】TOCスループット会計とは【計算方法と意味を解説】

 

こんにちは、セーシン(@n_spirit2004)です。

伝統的な間接費の配賦は、ときに企業の意思決定を誤らせてしまい、それこそが企業成長の制約(ボトルネック)になってしまう。

そうした制約をなくすために考えられた会計手法に、スループットをベースにしたスループット会計があります。

スループット会計は、TOC理論を考えたエリヤフ・ゴールドラット氏によって提唱されたもので、TOC理論における企業活動のベースとなる考え方なので、TOCスループット会計とも呼ばれています。

この記事では、その「スループット会計」の意味合いや計算方法について解説していきます。

 

伝統的なコスト計算(間接費の配賦)の問題点

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スループットについて書く前に、伝統的なコスト計算の問題点を書いていきます。

伝統的なコスト計算では、製品1個あたりのコストは次のように計算されます。

コスト = 直接原価 + 間接原価 + 販売管理費

1個あたりの売上から、上記のコストを引くことで、製品1個あたりの利益を測ることができます。

しかし、間接原価や販売管理費を製品1個あたりで厳密に計算するのは難しく、伝統的なコスト計算においては、妥当な範囲で1個あたりに配賦するということが行われてきました。

間接費用の配賦方法には、様々なものがあり、直接原価の比率で配賦したり、ABC(活動基準原価計算)のような手法を通じて配賦することも考えられてきました。

間接費の配賦に関する詳細は以下の記事をご覧ください。

【5分でわかる】間接費の配賦方法・パターン ABC(活動基準原価計算)とは こんにちは、セーシン(@n_spirit2004)です。 製品の原価を計算する場合、変動費と固定費という分け方もありますが...

 

間接費の配賦の問題点1:間接費の割合

元々、配賦という原価計算手法が編み出された当時は、直接費に比べて間接費の割合が圧倒的に少なかったので、大きな問題にはなりませんでした。

しかし、近年の企業活動においては、生産活動に直接的に関与しないホワイトカラーを呼ばれる人たちの数が増え、間接費の割合が大きくなっていて、配賦の考え方1つで製品の原価計算に大きな差異が生じるようになってしまったのです。

言い換えると、間接費の配賦方法1つで、意思決定が変わってしまう事態になったのです。

 

間接費の配賦の問題点2:作れば作るほどコストが下がる

従来型の原価計算だと、一定期間で製品をたくさん作って、配賦される間接費を薄めることで、利益を増やすことができます。

以下の計算式からもわかるように、生産量が増えれば、間接原価や販売管理費の配賦が小さくなるので、その分だけコストを下げる(=利益を増やす)ことができます。

コスト = 直接原価 + 間接原価 + 販売管理費

しかし、生産量を増やすと売れない製品が在庫として残ってしまうので、結果として企業のキャッシュフローを悪化させることになってしまいます。

見せかけの原価は下がっても、これでは企業活動にとってはマイナスになってしまいます。

 

スループットとは・利点・意味合い

企業活動の根幹は、仕入れた材料を売上に変える活動です。

そのため、ゴールドラット氏は、それを忠実に表す会計指標が必要だと考えました。

スループットとは、売上高から原材料費や外注費などの変動費の中でも真の変動費と呼ばれる費用を引いたものです。

スループット = 売上高 - 原材料費・外注費(真の変動費)

利益 = スループット - 業務費用

このスループットを主体として考えたのが、TOCスループット会計です。

TOC理論を生み出したエリヤフ・ゴールドラット氏は、伝統的な原価計算方法が、企業がキャッシュ増大をさせるための大きな制約(ボトルネック)になっていると考えています。

TOC理論の詳細については、以下の記事をご覧ください。

TOC制約理論とは【ボトルネック解決に集中した問題解決理論】 こんにちは、セーシン(@n_spirit2004)です。 日々の仕事の中でこんなことを感じている方も多いのではない...

 

スループットにおける在庫の扱い(販売するまでカウントしない)

伝統的なコスト計算や会計方針では、仕入れて在庫したものは貸借対照表の左側に載せられて、物が売れたときに初めて原価として損益計算書に計上される仕組みになっています。

しかし、キャッシュフローを良化するという企業本来の目的から考えると、在庫は買ったときに原材料費として計上されるべきものだと考えるべきだということです。

この考え方でいくと、たくさん生産して在庫を溜める行為は、従来のコスト計算だとコスト減になっていました。

しかし、スループット会計においては、

  • 販売されるまでカウントしない
  • 在庫が発生すると原材料費として計上する

という前提があるので、スループット会計の考え方だと、売れない在庫を積み上げることは単にスループットの減少にしかなりません。

 

スループットにおける間接業務の扱い(配賦しない)

スループット会計においては、間接業務の費用を配賦するという考え方がありません。

なぜなら、製品を作るために直接かかったお金は原材料費として認識できますが、間接業務はそうではないからです。

スループット会計では、次のように分けています。

原材料費・外注費: 何を作るために使った費用か
業務費用: 何をするために使った費用か

ゴールドラット氏は、「何をするために使った費用か」が業務費用の意味なのに、それを無理やり「何を作るために使った費用か」に置き換えることが自体が意味のないことだと考えました。

 

スループットと限界利益

スループットとよく似た計算式をもつものとして、限界利益があります。

限界利益 = 売上 - 変動費

利益 = 限界利益 - 固定費

この式から、スループットとは、限界利益とほぼ同義で、業務費用は、損益分岐計算の固定費と同等のものと見なして考えることができます。

しかし、限界利益にはTOC理論の重要な前提が欠けているとされています。

それは、

システムにつながりとばらつきがあると、スループットは制約によって律速されてしまう

ということです。

システムの制約を会計に取り入れることで、何をすると儲かって、何をしても儲からないかがシンプルにわかるというわけです。

なお、変動費と固定費を分ける方法を以下の記事に解説しています。

【3分でわかる】原価分解とは 変動費と固定費の仕分け 勘定科目法と最小二乗法正しく経営の意思決定をするためには、費用を「変動費」と「固定費」に分けて考えることがあります。 しかし、「変動費と固定費ってどうや...

 

TOCスループット会計を活用した意思決定

TOCスループット会計を活用すると、

  • どの製品を優先して作るべきか?
  • 内製すべきか、外製すべきか?
  • 投資をすべきか?投資をやめるべきか?

の判断に活用できます。

 

製品の収益性の判断

スループット会計を製品の収益分析に使う方法を見ていきます。

仮に製品A、Bのスループットがそれぞれ、

  • 製品A:500円
  • 製品B:300円

だとしましょう。

そうすると、製品Aを作った方が儲かるという判断になりますが、本当にそうなのでしょうか。

制約がなければ、製品Bをやめて製品Aを作り続けた方が間違いなく儲かりますが、もし制約がある場合はどうでしょうか。

製品A、Bの制約が同じだとした場合、A、Bそれぞれの制約消費時間と、制約消費時間あたりのスループットを考える必要があります。

もし、製品A、Bの制約消費時間と、制約消費時間あたりのスループットが以下のようになっているとすると、実は製品Aを作るよりも、製品Bをたくさん作ることに今の制約を集中させる方が正しいという判断になるのです。

商品A 商品B
スループット 300円 500円
制約消費時間 2分 4分
スループット/制約消費時間 150円/分 125円/分

このようにTOCスループット会計では、単にスループットの大小を考えるだけでなく、制約消費時間あたりのスループットが大事になってくるのです。

 

内製・外製の判断

内製している製品のコストが高いと考えて、購入価格の安い外製に切り替えると、見かけ上はコストが下がったように見えるかもしれません。

しかし、実際はその製品に配賦されていた間接費用が他の製品に配賦される結果となり、会社全体としては、むしろコストが上がってしまうケースもあるのです。

したがって、内製・外製を検討する際には、会計上配賦される間接費用を除いてスループットの大きさで考える必要があります。

詳細は、以下の記事に詳しく解説しています。

【3分でわかる】Make or Buy 内製・外製の意思決定 その判断基準・ポイント こんにちは、セーシン(@n_spirit2004)です。 メーカーと一括りにいっても、その設計・製造には様々なケースがあり...

 

ただし、スループットが低くなっても外製をした方がよいケースがあります。

それは、外製をすることによって、社内の制約を他の製品に対して活用することができ、全体としてスループットを改善できる場合です。

ここでも、制約の能力というものが鍵になってきます。

 

投資の判断

投資をする際には、その投資が制約の能力を高める(=スループットが上がる)かどうか、そのスループットで投資が回収できるかどうかが判断基準になります。

もし、制約の能力が上がらなければ、スループットが上がることもないので、その投資の意味はありません。(当たり前のことに見えますが、実際には非制約への投資なのに、業績がよくなるという計画が作られる場合も多いのです)。

また、制約への投資であっても、上がったスループットで投資が回収できなければ、やはり投資をする意味がないという判断になるのです。

 

まとめ

以上、TOCスループット会計の解説でした。

  • スループットとは、スループット(売上ー原材料費・外注費)を基軸にした会計指標で、物を作るために使ったお金をスループットとして考え、それ以外の何かをするために使ったお金を業務費用として考える。
  • 従来の原価計算では、生産量を増やして在庫を溜めるほどコストが下がったが、スループット会計だと在庫を増やすとスループットが減るだけになってしまう。
  • 従来の原価計算は、企業が成長をしていく上での制約(ボトルネック)にすらなっていた。スループット会計を活用することで、企業活動の真の目的であるキャッシュの獲得に直結させることができる。

なお、TOCスループット会計の本質は、こちらの本に全て書かれていますので、もっと深く知りたい方はあわせてご覧ください。

 

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セーシン
40代でサラリーマンを辞めて独立、現在は国内外からコンサルや顧問などの業務を受託するフリーランスです。20代から書き溜めた学び(ビジネスの基礎知識や経験談)をこのブログにまとめています。 ツイッターアカウントはこちら
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