以前の記事でも書いたように、固定費や間接費用はその配賦方法によって事業部門や製品の収益性の見え方が変わってくるという問題があります。そうした問題を解決するために、TOCスループット会計という考え方があります。
この記事では、「TOCスループット」を解説していきます。
スループット会計とは
スループットとは、売上高から原材料費や外注費などの変動費の中でも真の変動費と呼ばれる費用を引いたものです。
このスループットを主体として考えたのが、TOCスループット会計です。
スループット = 売上高 - 原材料費・外注費
利益 = スループット - 業務費用
TOCスループット会計のTOCとは制約理論のことで、現在の原価計算の会計基準が、キャッシュ増大の大きな制約になっているという意味で、TOCスループット会計と付けられています。
TOCの解説記事

従来型の原価計算だと、在庫を増やすことが利益につながってしまいますが、キャッシュの減少を招きます。実際の会社の活動において重要なのはキャッシュで、キャッシュ創出のためには、在庫の削減と業務費用の削減する必要があります。そうした概念を数式で表したのがスループットです。
フリーキャッシュフローやIRRが企業や企業の中の部門全体の財務を表すのに適した指標であるのに対し、スループットは実際の生産現場に即した考え方といえます。もちろんスループットの増大は、フリーキャッシュフローやIRRといった企業財務の良化をもたらすことになります。
スループットは、経常利益などでは測れない企業のキャッシュ獲得能力を見る上で有効な指標となるため、導入例が多くなっています。しかし、現行の指標である経常利益などが決して必要ないということではないので、通常は経常利益などと併用して評価の尺度としていることが多いようです。
スループットとよく似た計算式をもつものとして、限界利益があります。
限界利益 = 売上 - 変動費
利益 = 限界利益 - 固定費
この式から、スループットとは、限界利益とほぼ同義で、業務費用は、損益分岐計算の固定費と同等のものと見なして考えることができます。

スループット増大の例
ある製品の原価低減のために生産量(在庫)を増やす場合を考えます。このとき製品1個あたりの単価は減り、利益増大となり一見良いように見えます。ところが、在庫の増加はキャッシュの減少をもたらし、不良在庫のリスクを抱えることになります。
スループットでは、生産量を増やしても外注費や原材料費が増えるだけになります。スループット増加のためには、(ボトルネックに合わせた)リードタイム短縮による在庫の削減という対策が打たれることになります。
参考記事

