個人コンサルの時給について、スポットコンサルでの相場や、個人コンサルとして期待される水準から考えると、1時間あたり8,000円~20,000円くらいが目安になります。
もちろん上記は平均的な話なので、コンサルの提供価値が高ければ1時間10万円以上になるケースもあり得ます。
この記事では、上場企業から小規模企業まで、さまざまなクライアントにコンサルティングを提供してきた経験から、コンサル報酬の設定方法を複数の視点を交えて解説していきます。
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コンサルとしての時給を決める方法
コンサルの時給を決めるには、2つの方法があります。
コンサルとしての時給を決める方法
- 相場から時給を決める
- 期待する年収から時給を決める
それぞれ詳細を解説していきます。
相場から時給を決める
文字通り、市場の相場からコンサルフィーを考えていきます。
相場の中で参考になるのは、先ほども書いたスポットコンサルのビザスクです。
ビザスクの相場設定は1時間あたり15,000円ですので、まずはこれを1時間あたりのコンサル料金の目安と考えることができます。
(なお、ビザスクを通すと、30%を手数料として引かれますので、コンサルタントの手取り額は10,500円になります)
一方で、月1回訪問の経営コンサル顧問料の平均的な相場は月額10~20万円とされています。
1回あたり8時間とすると、次のようになります。
100,000円/8時間 = 12,500円/時間
200,000円/8時間 = 25,000円/時間
実際には準備時間や移動時間もあるでしょうから、前後で仮に4時間程度を費やすと考えると、時間あたりでは、8,333円~16,667円と計算できます。
100,000円/12時間 = 8,333円/時間
200,000円/12時間 = 16,667円/時間
まとめると、次のようになります。
報酬決定の拠り所 | 時給 |
ビザスクの平均コンサル料 | 15,000円/時間 |
月1回の顧問料 | 8,333~16,667円/時間 |
つまり、一般的な相場から考えられるコンサルの時給は最低で8,000円くらいから、最大でも17,000円くらいになります。
なお、専門性の高いコンサル案件だと、時間単価30,000円を超えるものもあります。
参考記事:外資系ENSから時間300ドルのインタビューを受けた話
期待する年収から時給を決める
期待年収と投入時間からコンサルフィーを決める方法もあります。
この場合、まず自分が期待する年収を決める必要があります。
一概にいくらが妥当とは言えませんが、ここでは仮に年収1000万円を前提に考えてみましょう。
1年間の実働日数は、休日を120日と考えると、245日になります。
1日あたり8時間働く前提とすると、年収1000万円における時給は次のようになります。
10,000,000円/(245日✕8時間) = 5,102円/時間
ここで注意が必要なのは、この金額はあくまで実働部分だけの金額であることです。
コンサルの仕事をすると、付随するさまざまな経費もかかりますし、給料に対する会社負担の保険料も考慮に入れる必要もありますし、利益も残すことも考えなければなりません。
そこで、コンサルタントとしての実働部分に対して、経費と利益を計算します。
売上に対する経費率や利益率の考え方に決まりはありませんが、たとえば経費率を40%、利益率を20%ととすると、コンサル事業として受け取る報酬は次のようになります。
A.コンサルタントとしての実働部分 | 5,102円/時間 |
B.経費率(D✕40%) | 5,102円/時間 |
C.利益率(D✕20%) | 2,551円/時間 |
D.売上 | 12,755円/時間 |
仮に経費率30%、利益率10%と考えると次のようになります。
A.コンサルタントとしての実働部分 | 5,102円/時間 |
B.経費率(D✕30%) | 2,551円/時間 |
C.利益率(D✕10%) | 850円/時間 |
D.売上 | 8,503円/時間 |
このように考えると、年収1000万円を確保しようと思うと、8,000円~13,000円くらいの時給を設定する必要があることがわかります。
相場と期待年収から考えるコンサル時給の目安
以上のことをまとめると、個人コンサルの時給の目安は以下のようになります。
市場相場から考えた場合:8,000円~17,000円/時間
年収1000万円から考えた場合:8,000円~13,000円/時間
年収1000万円であれば、市場相場とも大きなズレはありませんし、もっと単価を高くしたい(休みを多くしたい or もっと稼ぎたい)場合は、20,000円以上の単価にすることを考えてもよいでしょう。
コンサルティングに必要な時間と経費を算定する
時給が決まったら、コンサルをするのに必要な時間と経費を決めます。
以下2つの場合で考えてみましょう。
- 期間限定のプロジェクト型の場合
- 月額契約の顧問コンサルの場合
期間限定のプロジェクト型の場合
たとえば、プロジェクト期間が3ヶ月の案件を請け負ったとして考えます。
訪問回数や労働時間の詳細は、以下のとおりとします。
クライアント先への訪問回数 | 6回(月2回) |
クライアント先での実働時間 | 8時間/回 |
準備時間(メール対応等含む) | 4時間/回 |
移動時間 | 往復2時間/回 |
このときの合計時間は、次のようになります。
(8時間+4時間+2時間)✕6回 = 84時間
時間単価を仮に12,000円として、移動の交通費を1回あたり往復1,000円として考えると、このプロジェクトでの費用は次のようになります。
84時間 ✕ 12,000円 + 1,000円 ✕ 4回 = 1,014,000円(税抜)
宿泊や調査などを伴う場合は、その経費も金額の中に入れる必要があります。
まとめると、コンサルティング費用は次の計算式で計算できます。
コンサルティング費用
= 時給 ✕ 想定工数 + プロジェクト固有の経費(交通費、宿泊費、調査費等)
月額契約の顧問コンサルの場合
顧問の月額料金も同じように計算できます。
クライアント先への訪問回数 | 1ヶ月2回 |
クライアント先での実働時間 | 2時間/回 |
準備時間(メール対応等含む) | 2時間/回 |
移動時間 | 往復2時間/回 |
このときの合計時間は、次のようになります。
(4時間+4時間+2時間)✕2回 = 20時間
先ほどと同様に、時間単価を12,000円として、移動の交通費を1回あたり往復1,000円として考えると、顧問料は次のようになります。
12時間 ✕ 12,000円 + 1,000円 ✕ 2回 = 146,000円/月(税抜)
最終的には提供価値から時給の妥当性を決める
コンサルとしての時給は、上記を参考にして算定式を作ってしまえば、自動的に金額を計算できるようになります。
しかし、忘れてはいけないのは、コンサルタントは時給で働くのが仕事ではなく、提供価値に対して報酬をもらう仕事だということです。
したがって、計算した見積額が、提供価値に見合ったものかどうか、見積書を提示する前によく考える必要があります。
提供価値に見合わないと判断されれば、クライアントから仕事を受注することはできませんし、仮に1回目を受注できても、2回目以降の継続がなくなる可能性もあります。(コンサルティングは同じお客さんからリピートで仕事をもらえるかが重要なポイントになります)
コンサルの価値を他の価値と比較してみる
提供価値の判断基準として、最もシンプルなのが提供価値を他の価値と比較することです。
たとえば、以下のような考え方があります。
- コンサルによって得られる効果(利益向上、費用削減)に比べて、コンサルフィーの方が安いか?
- 同じことをクライアントの社内でやるよりも、コンサルフィーを払った方が安く済むか?
- 新しく人を雇うよりも、コンサルフィーの方が安く済むか?
最低でもこの中の1つはYesがないと、コンサルフィーの妥当性を説明するのは難しいでしょう。
ちなみに、独立コンサルタント向けに書かれた和仁氏の著書に、独立当初に15万円/月のコンサルフィーを設定したときの考え方が、以下のように示されていました。
税理士だったら月3~5万円ぐらい、社労士だったら月2~3万円ぐらいというように、もちろん内容によっても違いますが、たいたいそれぐらいという相場観が社長の頭の中にはあるわけです。
(中略)
じゃあ、どうしたらいいか考えました。僕がまず発想したのは、「自分のコンサルは、客観的に見てどれぐらいの価値をもつか?」です。
(中略)
「役割」は幹部社員と比べられたい。
(中略)
報酬は誰と比べれられたいか、というと「新入社員の給料と比べられたい」と発想しました。
和仁氏は、幹部社員の価値を新入社員よりも安く提供するという売り文句で、コンサルティングの仕事を受注していました。
▼参考にした本はこちらです▼
なお、この手法はフレーミングと呼ばれるもので、価格に対して提供価値を大きく見せるときに使われる手法でもあります。
提供価値が大きければさらに高い価格を提示できる
クライアントへの提供価値に見合わない価格では、受注が難しくなりますが、逆に言うと提供価値を大きく出せるなら想定時給を超える価格を提示できるようになります。
実際に、私はあるプロジェクト案件で、うまくいけば成果物の価値が想定時給を大きく上回るだろうと思えるケースがありました。
そのクライアントには、最初の3ヶ月は無料で相談を受けるという形にして、私自身の価値を感じてもらってから、プロジェクトで生まれる価値をベースにコンサル料を設定し、合意に至りました。
そのクライアント向けのコンサル案件の時給は、最終的に4~5万円になりました。
それでもクライアントには、社内の人材だけでは集められない情報を提供できることや、いつでも気軽にウェブ会議や電話で相談できることに価値を感じてもらっています。
なお、世界的な経営コンサルティング会社マッキンゼーのアジア支社の礎を築いた大前研一氏は次のように言っています。
マッキンゼーのコンサルティングを始めたとき、フィーは世界共通で1ヶ月2,500万円、そのとき能率協会のベテランコンサルタントが1ヶ月50万円だった。私は32歳、能率協会のコンサルタントは65歳。どうやったらよいか集中して考えた。私にとっては生きるか死ぬかの勝負だった。
これは、一般的なフィーの話とは次元の異なる話ではありますが、このように高い値付けを前提にすることから必死に価値を考えることも1つの方法論ではあります。
相手の懐具合を見て価格を決める方法もある
知人のコンサルタントは、以下のように価格設定していました。
独立してからコンサルを何件かやっていて、その都度見積もりを出していますが、この値付けが難しい
投入時間で換算か、相手に与える価値で換算かだと思いましたが、知り合いのコンサルはカウンターパートの決裁可能金額を探りながら値段を提示するのだとか
自分への値札の付け方は、時間がかかります
— セーシン (@n_spirit2004) July 18, 2019
たとえば、相手の決裁金額が3,000万円であれば、それが上限になりますし、決裁金額が1,000万円であれば、それが上限になります。
社長が相手で、社長の決裁金額が5億円くらいであれば、それが上限になります。(余談ですが、社長と言えども青天井ではなく、一定金額以上は取締役会で決裁が必要なケースがあります)
これらを大雑把にまとめると、その知人曰く「相手の顔色を見ながら決める」となります。
コンサルタントに成り立ての人には難しいかもしれませんが、慣れてくると「相手の顔色を見て」見積りを変えるという手もあるのでしょう。
まとめ
以上、コンサルタントの報酬の決め方でした。
- 始めに、コンサルタントとして働くときの時給を決める。
- 時給の決め方には、相場から決める方法と、期待年収から決める方法があり、自分が適切だと思う金額を決める。
- 請け負う仕事の実働時間を見積もって、プロジェクトの費用を計算する。
- 計算した費用が、クライアントへの提供価値と見合っているかを確認する。
- 提供価値が時給ベースの価格を大きく上回ると考えられる場合は、クライアントにその価値を認めてもらう努力をして、少しでも価格を価値に近づけられるようにする。
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